フランチャイズの開業資金はどう調達する?創業融資・保証制度・自己資金の考え方
フランチャイズの開業資金は、自己資金に、日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金、融資限度額7,200万円)や、信用保証協会の保証付き融資(創業関連保証、保証限度額3,500万円)を組み合わせて用意するのが基本です。必要な金額は業種と本部によって大きく違うため、まず本部の開示書面で初期費用の内訳を確かめ、そのうえで創業計画書を作って融資を相談します(2026年10月14日確認)。
この記事では、フランチャイズで独立するときの初期投資の考え方、公的な創業融資と保証制度の条件、「開業資金100万円」のような少額の自己資金でどこまで考えられるか、を公的機関の資料をもとに整理します。特定の本部の収益を約束するものではありません。
フランチャイズの開業資金の内訳
フランチャイズの初期投資は、本部に払うお金と、自分の店舗・事業を立ち上げるためのお金に分けて考えると整理しやすくなります。
| 区分 | 主な費目 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 本部に払う | 加盟金、保証金、研修費、開業前の指導料 | 返還されるか、どの条件で返還されないか |
| 店舗・設備 | 物件取得費(敷金・保証金・仲介手数料)、内装工事、設備・什器、システム導入費 | 本部指定の業者・仕様があるか |
| 開業準備 | 開業前の広告宣伝、採用・人件費、仕入れ・在庫 | 本部負担と加盟者負担の線引き |
| 運転資金 | 家賃、人件費、ロイヤルティ、仕入れなど売上が安定するまでの支出 | 何か月分を見込むか |
見落としやすいのが運転資金です。開業直後は売上が予定どおりに立たないことも多く、その間も家賃やロイヤルティの支払いは続きます。
初期費用は本部の開示書面で確認する
小売業・飲食業の本部のうち一定の要件にあてはまるものには、中小小売商業振興法第11条により、加盟希望者に対して契約締結前に事業の概要や契約の主な内容を書面で交付し、説明する義務があります(中小企業庁「特定連鎖化事業(フランチャイズ)について」)。中小企業庁は、要件にあてはまらない業種でも、重要な事項を事前に書面で開示・説明することが重要だとしています。
公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」では、本部が加盟者募集時に開示することが望ましい事項として、加盟後に支払う金銭(ロイヤルティの額・算定方法など)、契約の期間・更新・解除・中途解約の条件などを挙げています。予想売上げや予想収益を示す場合は、類似した環境の既存店の実績など根拠のある事実と合理的な算定方法に基づき、その根拠を加盟希望者に示す必要がある、とも書かれています(公正取引委員会)。融資を受けるときも、この根拠資料が事業計画の土台になります。
開業費用はどれくらい?公的調査の数字
フランチャイズに限った公的な統計ではありませんが、日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表)が参考になります(調査結果PDF)。
| 項目 | 調査結果 |
|---|---|
| 開業費用の平均値 | 975万円 |
| 開業費用の中央値 | 600万円 |
| 開業費用「250万円未満」の割合 | 20.1% |
| 開業費用「250万~500万円未満」の割合 | 21.7% |
| 開業時の資金調達額(平均) | 1,219万円 |
| うち金融機関等からの借り入れ(平均) | 827万円(調達額の67.9%) |
| うち自己資金(平均) | 279万円(同22.9%) |
調査対象は、日本政策金融公庫国民生活事業が2024年4月から9月に融資した、融資時点で開業後1年以内の企業(不動産賃貸業を除く)で、回収数は2,165社です。つまり「公庫から融資を受けて開業した人」の数字で、フランチャイズ加盟者だけの数字ではありません。同調査は、開業費用は長期的にみると少額化の傾向にあるとまとめています。
主な資金調達の方法
| 方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自己資金 | 返済不要。融資の審査でも事業への準備度合いとして見られる | 生活費の予備まで使い切らない |
| 日本政策金融公庫の創業融資 | 創業前から相談でき、長期返済が可能 | 創業計画書の提出と審査がある |
| 信用保証協会の保証付き融資 | 民間金融機関や自治体の制度融資で、保証協会が保証する | 保証料がかかる |
| 自治体の制度融資 | 自治体・金融機関・信用保証協会が連携する融資。利子や保証料の補助がある場合も | 条件は自治体ごとに異なる |
| 本部の支援制度 | 本部による融資のあっせん、分割払い、リース会社の紹介など | 金利・総支払額・中途解約時の扱いを確認 |
| 親族・知人からの借入 | 柔軟に借りられる | 借用書を作り、返済条件を明確にする |
| リース | 設備の初期支払いを抑えられる | 総支払額と中途解約の可否を確認 |
日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
創業時にまず検討されることが多い制度です。公式ページで確認できる主な条件は次のとおりです(日本政策金融公庫、2026年10月14日確認)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用できる人 | 新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人(適正な事業計画を策定し、遂行する能力が十分あると認められる人に限る) |
| 資金の使い道 | 事業を始めるため、または事業開始後に必要な設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 利率 | 基準利率。女性、35歳未満または55歳以上の人、認定特定創業支援等事業を受けて証明書を取得した人などは特別利率 |
| 担保・保証人 | 希望を聞きながら相談 |
さらに「創業融資のご案内」では、新たに事業を始める人や事業開始後に税務申告を2期終えていない人は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用でき、利率が原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引き下げられると案内されています(創業融資のご案内)。審査の結果、希望どおりにならない場合があることも明記されています。
なお、ページに記載されている「ご利用いただける方」の条件には、自己資金の割合は書かれていません。ただし、融資の判断では創業計画書の内容を確認するとされており、自己資金をどれだけ用意できているかは計画の実現性を説明する材料になります。
信用保証協会の創業関連保証とスタートアップ創出促進保証
民間の銀行・信用金庫や自治体の制度融資から借りる場合は、信用保証協会の保証を付けるのが一般的です。全国信用保証協会連合会の案内では、創業向けに次の制度があります(全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」、2026年10月14日確認)。
- 創業関連保証:事業を営んでいない個人が1か月以内に事業を始める(法人設立は2か月以内)具体的な計画がある場合や、創業から5年未満の場合などが対象。保証限度額3,500万円。
- スタートアップ創出促進保証:創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せすることで、経営者が会社の連帯保証人にならなくてよい制度。対象は法人での創業など。保証限度額3,500万円。
- 創業関連保証、再挑戦支援保証、スタートアップ創出促進保証は併用でき、併用した場合の合計の保証限度額は3,500万円。
市区町村が実施する「特定創業支援等事業」で支援を受けて創業する人は、創業関連保証などの「事業開始前」の対象期間が6か月以内に広がります。
市区町村の「特定創業支援等事業」を受けるメリット
産業競争力強化法に基づき、市区町村が地域の支援機関と連携して行う創業セミナーや個別相談を受けて証明書を取得すると、会社設立時の登録免許税が軽減されます。株式会社は資本金の0.7%(最低15万円)が0.35%(最低7.5万円)に、合同会社は最低6万円が最低3万円になります(中小企業庁「会社設立時の登録免許税の軽減について」)。前述のとおり、日本政策金融公庫の特別利率の対象にもなります。開業予定地の市区町村が実施しているか、事前に確認しておきましょう。
「開業資金100万円」でフランチャイズはできる?
自己資金100万円から考えること自体は珍しくありません。ただし、初期費用全体が100万円で収まる業種は、店舗を持たない、在庫を持たない、内装工事が不要、といった条件がそろう場合に限られます。店舗型の業種では、物件取得費や内装工事だけで自己資金を大きく超えることがあります。
少額の自己資金で検討するときは、次の順で確認すると判断を誤りにくくなります。
- 本部の開示書面で、加盟金・保証金・研修費・設備費・開業前費用の合計を確認する
- 売上が想定を下回った場合でも払える運転資金(家賃・ロイヤルティ・人件費)を何か月分用意できるかを計算する
- 不足分を融資で賄う場合、毎月の返済額が収支計画に入っているかを確認する
- 生活費の予備を自己資金から別にしておく
本部の広告にある「低資金で開業」という表現は、運転資金や物件費用を含んでいない場合があります。総額で比べることが大切です。
創業計画書で見られるポイント
日本政策金融公庫は「創業計画書」の書式と書き方の解説を公開しています(創業計画の書き方)。フランチャイズの場合、次の点を具体的に書けると説明がしやすくなります。
- なぜその業種・その本部なのか:自分の経験とのつながり、本部の支援内容
- 売上計画の根拠:本部から受け取った既存店の実績やモデル収益が、どの条件の店舗の数字なのか
- 費用の内訳:加盟金、ロイヤルティ(算定方法を含む)、家賃、人件費、仕入れ
- 資金計画:必要資金の総額と、自己資金・融資・その他の内訳
- 契約条件:契約期間、中途解約時の違約金、競業避止義務
公正取引委員会の考え方では、既存店の平均値などから作った「モデル収益」は、厳密な意味での予想売上げではないことが分かるように示す必要があるとされています(公正取引委員会)。本部の数字をそのまま書くのではなく、自分の出店予定地の条件に置き換えて説明できるようにしておきましょう。
資金調達でよくある失敗
運転資金を見込んでいない
初期費用だけで融資額を決めてしまい、開業後数か月で資金が足りなくなるケースです。運転資金も融資の使い道に含められるので、最初の相談時に一緒に計画します。
契約の解除条件を確認していない
中途解約の違約金が高額な場合、うまくいかなかったときに撤退できず、借入の返済と違約金が重なります。公正取引委員会も、中途解約の条件を契約上明確にし、募集時に十分説明することが望ましいとしています。
本部の支援制度だけで判断する
本部が紹介するローンやリースは手続きが簡単な反面、金利や総支払額が公的融資より高い場合もあります。公的融資の条件と並べて比べましょう。
個人保証の範囲を理解していない
法人で借りる場合でも、経営者が連帯保証人になると個人の財産で返済する責任を負います。経営者保証を不要とする制度(スタートアップ創出促進保証や日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度)が使えるかを確認しておきましょう。
相談先
- 日本政策金融公庫の支店・創業支援の窓口(創業前から相談可能)
- 地域の信用保証協会、取引予定の金融機関
- 市区町村の創業支援窓口、商工会議所・商工会(特定創業支援等事業の実施状況も確認)
- 契約書の内容は、弁護士など専門家への相談も検討
本部選びの観点はフランチャイズビジネス徹底比較ガイド、契約前の確認事項はフランチャイズ加盟で失敗しないための注意点、立地の考え方はエリア選び・立地選定のガイド、独立開業の全体像はフランチャイズで独立開業でも解説しています。
なお、このメディアを運営する通学型プログラミングスクール「テックジム」もフランチャイズ加盟を募集しています(利害関係があるため明記します)。教育系は在庫を持たない業種の一例で、運営の考え方はテックジムFC講座、同業他社との条件比較はプログラミングスクールのフランチャイズ20社比較にまとめています。どの本部を検討する場合も、この記事で挙げた開示書面と資金計画の確認は同じように必要です。
よくある質問
Q. フランチャイズの開業で創業融資は使えますか?
使えます。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、融資限度額は7,200万円です(2026年10月14日確認)。フランチャイズ加盟の場合も、本部の開示資料をもとに創業計画書を作って相談します。
Q. フランチャイズの開業資金は平均いくらですか?
フランチャイズに限った公的統計ではありませんが、日本政策金融公庫総合研究所の2025年度新規開業実態調査では、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。業種と本部によって大きく異なるため、本部の開示書面で内訳を確認してください。
Q. 自己資金100万円でもフランチャイズで開業できますか?
店舗や在庫を持たない業種などでは検討の余地がありますが、店舗型では物件取得費や内装費だけで自己資金を超えることがあります。初期費用の総額、数か月分の運転資金、融資の返済額を含めて計算してから判断してください。
Q. 日本政策金融公庫の創業融資に自己資金の要件はありますか?
新規開業・スタートアップ支援資金の公式ページの利用条件に自己資金の割合は記載されていません(2026年10月14日確認)。ただし創業計画書で事業計画の内容が確認されるため、自己資金の準備状況は計画の実現性を示す材料になります。
Q. 経営者が個人保証をしなくてよい創業融資はありますか?
信用保証協会のスタートアップ創出促進保証は、保証料率を0.2%上乗せすることで経営者が会社の連帯保証人にならなくてよい制度で、法人での創業などが対象です。日本政策金融公庫にも経営者保証免除特例制度があります。





