【終了】市場ごと消えたスマロボ、これからはモバイル・ロボットに注目!?【希望の光】(前編)
先月、ガートナー社の「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」が発表されました。(https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20190830)2018年版までは「スマート・ロボット」がプロットされていましたが、2019年版からは消えてしまいました。ぱっと見、「ロボット」の名前すら見当たらないですね。一方、「センシングとモビリティ」がトレンドとして見て取れますね。ロボット業界もこの分野に注目していくことでしょう。
移動(交通)手段としてのモビリティでは、自律走行(自動運転)が注目されていますね。それ以外にもEV(電気自動車)やコネクテッドカーなどがモビリティにおけるキーワードになっています。また、モノ作りだけでなく、MaaS(Mobility as a Service)といったサービスとしての提供を各社模索しています。こういった次世代のモビリティをスマートモビリティと言ったりします。
それ以外に、移動手段としてでなく搬送手段として、物流や各種サービスの現場でモビリティ技術が使われています。倉庫や工場で働くAGV(Automated guided vehicle、無人搬送車)などが代表例ですね。こういったロボットをMobile Robot(モバイル・ロボット)と言ったりします(ロボホンじゃないですよ)。
本レポートでは後者の、搬送手段としてロボティクス技術を使った「モバイル・ロボット」を取り上げます。その前編となる今回は主に物流や工場で使われる搬送ロボットを紹介します。
目次
- 1 【世界最恐】モバイル・ロボットの代表格、Amazon Robotics【仏恥義理】
- 2 【ダークホース】Amazon Roboticsの対抗馬?GreyOrangeのButler【当て馬】
- 3 【日の丸】オムロンのプラットフォーム型モバイルロボット、LDシリーズ【大和魂】
- 4 【孫さんも】ソフトバンクも出資したFetch Robotics【損した?】
- 5 【中国】Huaweiでも使われるHIKVISION【最強】
- 6 【北京】アリババやDJIも採用したGEEK+【日本でも導入】
- 7 【上場延期】可愛いデザインで多機能、ZMPのCarriRo【喧嘩上等】
- 8 【国内ベンチャー】自動追従搬送ロボットの代表格、Doog【がんばれ】
- 9 まとめ
20週で240本動画アップ。チャンネル登録400名となりました。IT起業家対談番組「フーテンのグラさん」
【世界最恐】モバイル・ロボットの代表格、Amazon Robotics【仏恥義理】
Amazonが物流ロボットを手がけるKiva Systemsを買収したのは2012年。買収総額は約7億7500万ドル。ルンバのような形状で自走して可動式商品棚を運ぶKivaロボット(ドライブ)をはじめとした、Amazonが構築するロボット物流システムは「Amazon Robotics」と呼ばれ、2016年に発行されたドイツ銀行のレポートによれば、Amazon Roboticsによってフルフィルメントセンターでかかるオペレーションコストを20%削減できるとのことです。米国内に広がる25のフルフィルメントセンターで10万台以上のロボットが稼働しているとのことです。また、2019年6月に行われたre:MARSカンファレンスではXanthusとPegasusという新型の2種類のロボットが発表されました(https://jp.techcrunch.com/2019/06/06/2019-06-05-amazon-debuts-a-pair-of-new-warehouse-robots/)。
ECで圧倒的なシェアを持ち、自社でフルフィルメントセンターを構えるAmazon、今後この分野での存在感がますます増えていくでしょう。
【ダークホース】Amazon Roboticsの対抗馬?GreyOrangeのButler【当て馬】
インド発のロボットベンチャー企業GreyOrangeが手がける無人搬送ロボット「Butler(バトラー)」はAmazon Roboticsのようにフルフィルメントセンターで働くロボットです。高速仕分けシステムの「Sorter」と組み合わせることで9倍もの業務効率化が可能とのことです。GreyOrangeは現在までに総額1億7000万ドルを調達し、研究開発と海外展開を推し進めています。日本では、アスクルや楽天で物流の要職を務めた宮田社長が設立した物流ベンチャーGROUNDが、GreyOrangeと業務提携を行いButlerを展開し、ニトリやトラスコ中山に導入されています。GROUNDは他にも、大和ハウス工業、岡村製作所、データサイエンティスト育成企業のデータミックスらと資本業務提携を行い、総合的に物流ソリューションを提供していく構えです。
【日の丸】オムロンのプラットフォーム型モバイルロボット、LDシリーズ【大和魂】
オムロンは2015年に米国の産業用ロボットメーカーAdept Technologiesを2億100万ドルで買収し、ロボット分野に参入しました。元々Adept社はグローバルで展開していて一定のシェアを獲得していましたが、オムロンの買収によって日本での展開も加速され、モバイルロボットのLDシリーズを目にする機会も増え、村田製作所やアイシンAWの工場に導入されました。SLAM技術を備えたLDシリーズはカスタマイズ性が特長で、モバイルロボット上部にコンベアやアームロボットなどを搭載させるハードウェア面でのカスタマイズの他、ソフトウェア面でのカスタマイズも可能となっています。アイシンAWでも運行管理システムを内製して利用しているそうです(https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/rob/18/00004/00026/)。また、ロボットの足廻りとして搬送以外でも使われ、フィンランドのヘルシンキ空港では5Gネットワークを使った監視や案内を行うサービスロボットに使われています(https://www.teliacompany.com/en/news/news-articles/2018/telia-and-finavia-bring-5g-robot-to-helsinki-airport/)。
【孫さんも】ソフトバンクも出資したFetch Robotics【損した?】
ROSの開発で知られるロボット研究開発企業Willow Garageに所属していたMelonee Wise氏が2014年に米国で創業したFetch Roboticsですが、ソフトバンクが出資したことで日本でも話題になりました。2019年7月にはシリーズCで4600万ドルを調達し、資金調達の総額が9400万ドルとなりました。Fetchは現在、19ヶ国でDHLやRyderなどの顧客にロボットを配備していて、顧客の倉庫は平均で500,000平方フィート(東京ドーム約1つ分)とのことです。また、同社の「Fetch Cloud Robotics Platform」は、倉庫および内部物流向けのマテリアルハンドリングとデータ収集に対応する市場で唯一のクラウド型AMR(Autonomous Mobile Robot)テクノロジーで、クラウドコンピューティングがITにもたらしたようなスピード、アジリティ、コストメリットをもたらすことによって自動化に革命をもたらしていくとのことです。RaaS(Robot as a Service)での事業展開を進めていて、IT業界のトレンドをうまく取り入れていっています。
【中国】Huaweiでも使われるHIKVISION【最強】
HIKVISION(ハイクビジョン)は、中国の杭州市に本社を置く防犯カメラ及びレコーダー企業で、防犯カメラで世界シェア1位の企業です。HIKVISIONの子会社Hikrobotでは様々なモバイル・ロボットを開発しています。Amazon Roboticsのような物流向けの自動搬送ロボットは、同じ中国企業のHuaweiでも使われているそうです。また大型サイズのロボットも開発していて、駐車場で自動車をロボットに乗せて駐車する動画が話題となりました。さすが中国企業はスケールが大きいですね。なお、HIKVISIONはNDAA(米国国防権限法)2019で、米国政府機関における機器・サービスの購入、利用その他を禁止された他、米商務省の「エンティティー・リスト」追加による同社への輸出規制の検討も行われたようです。
【北京】アリババやDJIも採用したGEEK+【日本でも導入】
中国・北京に本社を構え物流ロボットの製造・販売を手掛けるGEEK+(ギークプラス)は2017年には日本法人も立ち上げました。これまで、アリババグループのTmallやDJI、中国EC大手のVIP.comの他、世界で100以上のロボット倉庫プロジェクトに5000台以上のロボットを供給してきたそうです。2018年11月には1億5000万ドルを調達したことを発表し、2015年の創業以来およそ2億1700万ドルを調達しました。日本では、大和ハウス工業のグループ会社でフルフィルメントサービスを手がけるアッカ・インターナショナルが導入しています。アッカ・インターナショナルによると、中国GEEK+を視察した際に出荷作業にかかる人員が約10分の1で済むことに衝撃を受けて導入を決めたそうです(https://www.logizard.co.jp/article/05.html)。日本GEEK+のHPを見ると見学ツアーをかなり強調しているので、興味がある方は行ってみてはいかかでしょう(https://www.geekplus.jp/index.html)。
【上場延期】可愛いデザインで多機能、ZMPのCarriRo【喧嘩上等】
上場延期で色々苦労のあったZMPですが、手押し台車のようなユニークなデザインの搬送ロボットCarriRoを提供しています。2016年の販売開始から累計100ユーザー以上の導入実績があるとのことで、リモコンによる操縦、作業者や親機に追従するカルガモモード、路面に貼られたランドマークを識別しながら自動で移動し荷物を搬送させる自律移動モード、自動運転向けクラウドサービスROBO-HIと連携した管理システム、タブレット用のアプリ「CarriRo ピッピ」、牽引アタッチメント、パトランプなど、様々な現場に適用可能な機能やオプションを備えています。また、2018年には中国市場に参入し、業務提携先の豊田通商を通じて中国での販売体制を用意していくそうです。
【国内ベンチャー】自動追従搬送ロボットの代表格、Doog【がんばれ】
自動追従機能がウリのサウザーですが、リモコン操作やライントレースにも対応していて簡単に現場に導入できるのが特徴です。また、多様な環境に対応していて、広視野の赤外線レーザーセンサーは屋内外や昼夜を問わずに性能を発揮できるそうです。小雨の環境や3cmの段差、9度の登坂にも対応しています。これによって建物間の屋外搬送も可能とのことです。2019年の8月に行われた屋外イベント「竹芝夏ふぇす」では、りんご型の外装をつけたサウザーを使ってフード&ドリンクをお客さんのテーブルまで運ぶなど活躍の場が広がっています(https://newswitch.jp/p/18913)。
ちなみに、社名のDoogは「道具」と「Dog(ドッグ、犬)」、サウザーは「サウザー犬(ジャイアント・シュナウザー)」に由来するとのこと。
本日より芝客船ターミナル(デッキ&広場)にて開催中の竹芝夏ふぇす。
— CiP〜竹芝Project (@CiP_takeshiba) August 21, 2019
同時開催の東京都事業「Tokyo Robot Collection」にて、CiP協議会主催で、りんご型の「スマートショップ」を出店!追従運搬ロボットを活用して、フード&ドリンクをお客様のテーブルまでお持ちします!https://t.co/JdUBh72sPn pic.twitter.com/xw1lOU4tIa
まとめ
国内だけでみてもサイバーダインや、シャープ、パナソニック、ダイヘンなどまだまだ多くのプレーヤーが参入している搬送ロボット。費用対効果が測定しやすく、実際に効果が出やすいことから導入が進んでいるのだと思われます。そのため、競争が過熱している分野になっています。
次回はモバイル・ロボットの中でもサービス分野寄りのケースをレポートしていきます。