【終了】市場ごと消えたスマロボ、これからはモバイル・ロボットに注目!?【希望の光】(後編)
お待たせしました。いや、お待たせし過ぎたかもしれません。今回はモバイル・ロボットレポートの後編になります。前編のレポートでは、ガートナー社の「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2019年」で2018年版までプロットされていた「スマート・ロボット」が消えてしまい、ロボットの「ロ」の字も見当たらない状況で、店頭で時おり見かける白い物体のように人々から飽きられ忘れられていくのか、と悲しい思いをしていたところ「センシングとモビリティ」のトレンドに注目し、これからはMobile Robot(モバイル・ロボット)だ!と、倉庫や工場で働くAGV(Automated guided vehicle、無人搬送車)を中心にお届けしました。
後編となる本レポートでは、倉庫や工場を出てもう少し消費者に近い、デリバリーなどの配送ロボットを取り上げます。モバイル・ロボット、ナイスですね〜。
目次
【陸海空】Amazon RoboticsのScout【完全制覇】
Amazonのロボット物流システムはフルフィルメントセンターにとどまらず、家庭までのラストマイルまでロボット化を進めるようです。Amazonの宅配ロボット「Scout」はクーラーボックスほどのサイズの6輪のロボットで、商品を注文者の自宅まで自動で配達します。Scoutは2019年の1月から米国ワシントン州スノホミッシュで、8月からカリフォルニア州アーバインで試験運用を開始しています。Amazonはこのロボットの学習のために、レーザーやカメラ、航空機を使って収集した画像を基にデジタル上に実在する町の仮想コピーを作成し、気象条件などを変更しながら、そのデジタルコピー上でシミュレーションを繰り返しているそうです。
Amazonはこの宅配ロボット以外にも、ドローンで荷物を配達する「Prime Air」を開発中で、近々サービス開始するとのこと。既存産業を飲み込むアマゾン・エフェクトは配送の世界にも及びそうです。
【ビジョンファンド恐慌?】SoftBankが出資のNuroとZume【全部いっちゃう?】
10兆円ファンドとして世界中から注目のソフトバンク・ビジョン・ファンド、この分野にも手を出しています。2019年2月に自動配送ロボットを手がける米Nuro社に9億4000万ドルの出資を行いました。Nuroはグーグルの自律走行車(Waymoとしてスピンアウト)の開発に携わっていたデイヴ・ファーガソンと朱佳俊(チュウ・ジャジュン)が共同で創業したスタートアップで、国内最大のスーパーマーケットチェーンKrogerやドミノピザと提携し、自動配送サービスを開始しています。
また、2018年にはソフトバンク・ビジョン・ファンドが宅配ピザZume Pizzaを手がけるフードテック企業のZumeに3億7500万ドルの出資を行なったとウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。Zume Pizzaはロボットによってピザを製造し、ピザオーブンの搭載された宅配トラック内でピザを焼き上げながら宅配するピザチェーンで、将来的には自動運転宅配ロボットと組み合わせることが期待されています。WeWorkのようにお家問題で世間を騒がすことなく、冷めたピザと呼ばれないうちにアツアツのサービスを実現してほしいものですね。
【本名は】ホリエモンも参加、Hakobot【堀江貴文】
Hakobot社は2018年5月に宮崎県を本拠に設立されたベンチャー。同年7月にはホリエモンこと実業家の堀江貴文氏がアドバイザーに就任して話題となりました。その後、制御盤の設計などを手がける三笠製作所と業務提携を行い、ADR(Autonomous Driving Robot)というモバイル・ロボットを開発しています。Hakobotは物流のラストワンマイルを担うことを目指しているそうですが、2019年4月にはホリエモンは自身のTwitterにて「Hokobotはこれに加えて移動パトカー的な動きをしようとおもってます。」と発言していて、配送だけでなく警備の用途での活用も見越しているようです。三笠製作所がドバイ警察との共同プロジェクトで世界初の移動式交番を開発していたりする(https://www.mikasa-med.co.jp/dubaipj/)ので、このあたりと何か関係があるのでしょうか?ホリエモンも警察事情には詳しいはずなので、きっと良いアドバイザーとなることでしょう。
【重要なので】チャイナパワーを活用する楽天【日本語で書きます】
流通総額で国内1位(https://ecclab.empowershop.co.jp/archives/58388)の楽天ですが、自動配送にも取り組んでいます。2016年から「楽天ドローン」というドローンを使った取り組みで、企業や自治体と連携して実証実験や試験的なサービス提供してきましたが、2019年2月には、中国大二位のECサイト「JD.com」を運営する京東集団のUGV(地上配送ロボット)を導入することを発表しました。楽天はそれまでACSLとドローンを共同開発していましたが、より実績のある京東のドローンを使っていくとのことです。楽天がパートナーに選んだ京東ですが、2018年の財務報告によればテンセントが大株主で17.8%の株式を所有するほか、ウォールマートが9.9%を保有。また、Googleが5.5億ドル出資するなど、アリババやAmazonへの対抗馬としての期待もあるようです。
また、楽天は西友と共同で、一般利用者からの注文を受けUGVを活用して商品を配送するサービスを2019年9月21日(土)から10月27日(日)まで実施中です。
チャイナパワーでライバルを蹴散らせるか?社内公用語が中国語になる日も近いかもしれません。
【世界最大】FedExもロボット開発へ参戦【物流会社】
世界最大手の運送会社FedExは2019年2月にFedEx SameDay Botという自動配送ロボットを発表しました。その後Roxoと名付けられたこのモバイル・ロボットはセグウェイや6輪電動車いす「iBot」を開発したことで知られるディーン・ケーメン氏と協力して開発されました。上部に設置されたLIDARセンサーを機械学習アルゴリズムと組み合わせて歩行者や車などの障害物を検知して安全に回避したり、可動式の車輪を傾けて段差を乗り越えたり、坂道を走破したりと町中での移動にほとんど支障がないそうです。また、オペレーターによる遠隔操縦にも対応しているとのこと。FedExはウォルマートやPizza Hut、Lowe’sなど提携企業と協力してメンフィスで実証実験を行っており、今後はマンチェスター、ニューハンプシャー、テキサス州のプレイノ、フリスコといった都市に実験の場を広げていくようです。FedExは2019年8月にAmazonとの地上配達契約を終了しており、モバイル・ロボットの領域でもAmazonとの戦いが注目されます。
【ボンジュール】屋内や屋外だけでなくゲームまで進出、EffiBOT【フランス産】
フランスのEffidence社が開発したEffiBOTは可搬重量300kgで自動追尾機能を備えるモバイル・ロボット。DHL、ルノー、La Poste(フランス郵政公社)、Deutsche Post(ドイツポスト)など様々な企業での実績があります。日本では2018年9月に横浜ランドマークタワーで三菱地所が行った実証実験でも使われていました。ドイツポストでは「PostBOT」というロボットを郵便配達向けに開発していますが、これはEffiBOTをベースにカスタマイズしたものになります。EffiBOTは屋外配送だけでなく、屋内搬送にも利用され、DHLの物流倉庫などでも活用されています。DHLはよっぽど思い入れが強いのか「DHL EffiBOT Dash」というスマートフォンアプリをAppStoreやGoogle Playで公開しています。
【脱親方日の丸】脱ブラック、日本郵便の取り組み【脱ノルマ】
2019年1月に福島県双葉郡浪江町で「配送ロボットの物流分野への活用実現に向けた実証実験」を行いました。この実証実験で用いられたのが株式会社DroneFutureAviation(DFA)の陸上配送ドローン(配送ロボット)「YAPE」とZMPの「CarriRo Deli」です。YAPEはイタリアを本社とするe-noviaが開発した2輪のコンパクトな配送ロボットで狭い道の走行や歩道の上り下りが可能とのこと。顔認証システムを備え利用者の識別も可能となっています。CarriRo Deliは前編のレポートでも紹介したZMPの配送ロボット。ZMPは搬送ロボットのCarriRo、配送ロボットのCarriRo Deliの他に、搭乗可能なモビリティのRobocar Walk、自動運転車両プラットフォーム RoboCarなど手広くモバイル・ロボットに取り組んでいます。
かんぽや年賀状、見守りサービスなどノルマ問題が取り沙汰される日本郵便ですが、モバイル・ロボットは消費者や社員のために正しく使ってほしいものですね。
【車輪でなく】4足歩行ロボットが荷物をお届け?ANYmal【人類のロマン】
米国ラスベガスで開催されたCES 2019にて、グローバルの大手自動車部品メーカーContinentalが無人配達ソリューションを公開しました。Continentalが開発した都市向けの無人ロボットタクシー「CUbE」に配送ロボットを搭載し、目的地に到着すると、荷物を背中に載せた配送ロボットがCUbEから下車し、顧客に荷物を届けるというものです。この配送ロボット犬のような形をした「ANYmal」という4足歩行ロボットで、スイス国立工科大学とそこからのスピンオフ企業ANYboticsが開発したものです。犬というよりソフトバンクが買収して話題になった某米国企業の某ロボットに似ていますね。長距離の運送は自動運転車で行い、段差などがあるようなラストマイルは4足歩行ロボットでカバーするという合わせ技で、このように複合的にロボットを組み合わせるようなアプローチも有効そうですね。
ちなみに、最近ANYmalの足に車輪が付いたというニュースがあって、ヤッターワンを思い浮かべてしまいました(古いか)。
<動画:
まとめ
配送ロボットは今回紹介した以外にもStarship Technologies(エストニア、米国)、Marble(米国)、Refraction(米国)など多くのプレーヤーが参入しています。モバイル・ロボット以外のアプローチでも、クロネコヤマトとDeNAのプロジェクト「ロボネコヤマト」のような、自動運転車を活用した取り組みも増えていくでしょう。今後ますます競争が激化していく分野と言えるでしょう。
また、工場や倉庫の搬送ロボット、宅配のラストマイル向けの配送ロボット以外にも、ホテルや病院といった施設内での配送ロボットも色々と出てきています(このあたりも、また機会があれば取り上げます)。
やっぱりモバイル・ロボット、ナイスですね〜。