コロナ時代の新しい生活様式向けロボット スポーツ編
全国的に緊急事態宣言も解除され、徐々に経済活動が再開されていくものを思われますが、それでも以前と全く同じ生活を取り戻すのはまだまだ時間がかかりそうですね。新型コロナの存在する「withコロナ時代」に対応した「新しい生活様式」が求められています。新しい生活様式では、人の接触をなるべく減らすことが求められるため、ロボットの活躍の場が広がることが予想されます。
新型コロナの影響は様々な業界に出ていますが、来年に延期された東京五輪もIOCから再度の延長はないという厳しい発言が出ていますね。プロスポーツでは無観客試合で再開と言う話も出ていますが、今年の全国高校野球選手権大会やインターハイも中止になり、スポーツ業界は逆風に立たされています。
私も自粛期間ですっかり身体が鈍ってしまい、ここからどう取り戻そうか考えものです。
こんな時代だからこそ、ロボットを活用してスポーツを盛り上げようと言うことで、今回はスポーツで使われるロボットをまとめます。
目次
ロボットスーツで在宅フィットネス、ATOUN
「家庭向けから軍事用途まで 世界の最新アシストスーツ8選」でも取り上げたことのあるATOUNですが、フィットネスクラブ ピノスけいはんなと、自宅などの遠隔地でのトレーニングをより高度にサポートできるリモートフィットネスシステムを開発したと5月21日に発表しました。
このシステムはオンライン会議ツールとATOUNの歩行支援タイプのパワードウェア プロトタイプ「HIMICO」を連携したもので、HIMICOに内蔵されているセンサーにより、ユーザーの動きや動作の回数などのアクティビティデータを取得して数値化・グラフ化し、ユーザー自身だけでなく、離れた場所にいるトレーナーにもリアルタイムで共有するそうです。トレーナーは、映像だけではわかりづらい部分をデータによって補完しつつアドバイスをおこなうだけでなく、リモートでHIMICOを操作し、ユーザーの運動にアシストや負荷を加えたりすることもでき、筋力トレーニングや有酸素運動を的確かつ効果的にサポートを行うとのことです。
マシンや自体重ではトレーニングできない低体力者から、フィットネスクラブに通っている普通の体力者まで幅広く対応できるので、自粛生活で弱った体でも段階的に鍛えられそうですね。これなら安心して自宅でトレーニングできる、新しい生活様式に対応したサービスと言えそうです。サービス提供は今後できるだけ早い時期を目指すとのことですが、オンラインならもジム不要で、また遠隔地の会員も参加が可能なので、新しいフィットネスクラブの形が生まれそうです。
来シーズンの去就が気になるBリーガーロボットCUE4
プロバスケットボールリーグB.LEAGUEの人気チームアルバルク東京、その親会社であるトヨタ自動車が開発したAIバスケットボールロボット「CUE4(キューフォー)」が「B.LEAGUE AWARD SHOW 2019-20」において「BREAK THE BORDER賞」を受賞しました。CUEは狙ったシュートを100%外さないロボットとしてトヨタの社内有志団体「トヨタ技術会」によって開発され、2018年2月にアルバルク東京の登録選手となり、その後改良を重ねCUE4は4号機にあたります(チームHPの選手一覧にも掲載されています)。といっても試合に出場するわけではなく、エキシビジョンでの登場となっています。
1号機はフリースローエリアがシュートレンジでしたが、社内で正式にプロジェクト化され、「未来創生センターAIアスリートロボット開発グループ」で開発されたCUE2からはスリーポイントエリアからのシュートが可能となりました。CUE3では更にバンクシュートやセンターサークルからのロングシュートが可能となり、2019年6月には「ヒューマノイドロボットによる連続フリースロー最多成功数」のギネス記録に認定されました(2020回の連続成功)。CUE4では自走機能やボールを自ら掴む機能が追加になり、2020年1月に行なわれたB.LEAGUEオールスターゲームで行なわれたスリーポイントコンテストに出場、計11本のシュートをゴールへ沈めました。
2年間限定での活動ということで社内プロジェクトが始まりましたが、ちょうど2年目となる今シーズンは新型コロナウイルスの影響により、残念ながらシーズン途中で終了となってしまいました。今後の方針はまだ明らかになっていませんが、さらなる進化を遂げて、ロボット同士で試合ができる未来に期待したいですね。
ロボット卓球コーチフォルフェウス
「フォルフェウス」はオムロンが開発する卓球ロボットです。2020年1月にはCES2020にて、その第6世代が披露されました。フォルフェウスはオムロンが目指す「人と機械の融和」を実現するコア技術「センシング&コントロール+Think」の進化を紹介するために、先進的なAI技術やロボティクス技術をアピールするロボットとして、2013年10月に中国・北京で開催されたプライベート展示会で初披露されました。フォルフェウスが目指すのは強さではなく、プレーヤーの能力を引き出すコーチング卓球ロボットです。世代を追うごとに進化していき、トップスピン、バックスピン、ドライブ、カットなど多彩な返球が可能となり、AIによってプレイヤーの打ち方やレベルを分析して、そのレベルに合わせた返球でラリーを継続させる他、卓球上級者の骨格や動作のデータと照合し、上級者との差をフィードバックするパーソナルコーチング機能も備えます。
2019年12月にはスクウェア・エニックスとAIの共同研究をすると発表が行われました。その結果、第6世代ではプレイヤーの表情やバイタルデータからリアルタイムに人の感情を識別し、感情に合わせてプレイヤーのモチベーションを高める返球ができるようになり、コーチング能力が進化しました。また、カメラのフレームレートの向上と画像処理や返球制御へのAI活用により、球の回転認識や返球精度が向上し、カーブやスピンなど様々な球種への対応や、更に高速なラリーができるようになりました。
ロボットのコーチなら濃厚接触も安心ですし、最新の技術を活用したコーチングで将来メダリストが誕生したら夢がありますね。
ロボットキャディX9
自粛生活で趣味のゴルフを我慢していたお父さんに朗報です。英国のStewart Golf社が販売するロボットキャディ「X9」を使えば人との接触を減らしてのラウンドが可能です。X9はゴルフバッグを運搬する電動のゴルフトロリーで、Bluetoothハンドセットとペアリングすることでプレーヤーを追従します。通信可能距離は50mで、マニュアルでの遠隔操作も可能です。下り坂でのブレーキ機能やスタビライザー機能も備えているそうです。Stewart Golf社のサイトでは1,499ポンド(約20万円)で販売されています。日本では兵庫県・氷上の会員制ゴルフクラブ「ザ・サイプレスゴルフ」で2017年8月より導入されていて、1ラウンド3,000円でレンタル利用することができるそうです。
Stewart Golf社によると、利用者の91%が「よりコースでリラックスできた」95%が「友人に勧めたい」他、67%が「1ラウンドあたり平均3打スコアが改善された」という調査結果があるそうです。メンタルスポーツと言われるゴルフですから、快適なプレーが結果に反映されるのですね。キャディさんとのコミュニケーションを楽しむのもいいですが、この機会に人との接触を減らしてストイックにゴルフに向き合い、スコアを伸ばしてみてはいかが?
球拾いからの解放、Tennibot
Tennibotは米国ボストンのTennibot社が開発するロボットで、コンピュータビジョンとAIでボールを判別し、ルンバのようにテニスコート上のボールを自動で拾います。スマートフォンの専用アプリでエリアを指定して使用を開始、90分での充電で4−5時間稼働が可能で、一度に80個のボールを回収することが可能だそうです。ロボットが球拾いをしてくれるので、一人でもくもくと練習に励むことができますね。なお、価格は1台1,000ドルを予定しているそうです。
2015年に開発スタート、2018年4月にKickstarterでクラウドファンディングを開始し80,838ドルの支援を集めた後、Indiegogoへ移行し追加で18,455ドルの支援を獲得、合わせて総額99,293ドル(約1,070万円)の調達を行っています。当初、支援者へ2019年1月にTennibotを届ける予定でしたが、2020年5月現在では未だ到着していないようです。この新型コロナの期間にもくもくと開発に励んで、早くロボットを届けてほしいですね。
アメフト練習ロボットMVP
米国のアメリカンフットボール向けトレーニング用品メーカーROGERS ATHLETIC社が販売する「MVP 」はアメフト練習用ロボットです。MVPは「Mobile Virtual Player」の略で、クッション性のある自走式ロボットで、倒しても起き上がり小法師のように起き上がり、タックルの練習などを行うことができます。DRIVE(5,500ドル)、DRIVE JUNIOR(3,600ドル)、SPRINT(3,450ドル)と3つのラインナップを用意している他、シミュレーション効果を高めるために、3種類のアームのオプションがあります。DRIVEは遠隔操縦によって時速32kmで走行可能で本体は約64kgとなっていますが、柔らかい素材で作られている他、タックルの衝撃によってモーターがOFFになるため安全性が保たれるとのことです。
タックルの練習は危険を伴いますが、MVPを使うことで練習中の怪我を減らすことができるため、NFLや大学リーグのチームなどで実際に使用されています。昨年はラグビーW杯が盛り上がりましたが、MVPはラグビーでも使えそうですね。withコロナ時代では、怪我だけでなくウイルス感染とも向き合う必要があるので、ロボットを使って安全な練習環境を構築することが期待されます。
バレー全日本チームの秘密兵器、ブロックマシン
バレーボールの日本代表は試合中の分析にタブレット端末を取り入れてきましたが、今度はロボットを練習に取り入れているようです。「ブロックマシン」は元女子日本代表監督の真鍋氏が発案し、スポーツ庁のマルチサポート事業として、筑波大などと協力して開発したロボットで、3体のブロッカーがネット前を高速で左右に移動し、腕を伸ばしてスパイクのブロックを行います。手動と自動の2種類の操作が可能で、手動の場合はあらかじめ位置や高さをプログラムしておき、選手の動きをみながらタブレット端末でタップして操作します。自動の場合は、ブロックマシンの足元にあるセンサーを使ってAIがセッターがトスを上げようとする動作を検出し、アタッカーが走り込む軌道から打点を割り出してロボットを制御します。正しい位置でブロックできる割合は、手動操作では60%に対して自動操作は78%とのことです。なお、開発・製作費は1,000万円以上かかっているそうです。
スパイク練習はブロッカーと対面で行うため、感染リスクが気になるところですが、ロボットなら安心ですね。全日本チームの東京五輪での活躍に期待しましょう。
無観客試合を盛り上げる応援ロボット
世界でもいち早く新型コロナが落ち着いた台湾ですが、4月11日には台湾プロ野球リーグ(CPBL)が無観客で開幕しました。台湾の楽天モンキーズは無観客試合を盛り上げるべく、ロボット応援団を結成したと発表しました。スタンドには多数のマネキンやパネルが設置され、太鼓を叩くロボット応援団とともに話題となりました。
ちょっとシュールな光景ですが、これから日本もプロスポーツの無観客試合が始まっていくので、ロボットを使って盛り上げるのもありですね。個人的には客席にロボットを配置してアバター観戦したい!
CPBL公式戦は、4月11日(土)に開幕!当面は無観客試合となるので、ロボット応援団が試合を盛り上げてくれます。 pic.twitter.com/15bqDHy0is
— Rakuten Monkeys (@RakutenMonkeys) April 8, 2020
まとめ
スポーツの分野でも色々ロボットが活用されていますが、主に練習を支援するものが多いですね。人との接触を減らせる他、ロボティクスとAIを組み合わせることで、今までより効率的な練習方法が生まれるかもしれません。将来的にはロボット同士のスポーツ競技も見てみたい!
しかしながら、ある意味一番身近なスポーツ向けロボットはピッチングマシンかもしれません。当たり前過ぎてわざわざロボットと言わないでしょうが。今回紹介したロボットも進化と普及を続けていってもらいたいですね。