自動運転とWeb3:スマートカーのビジネスモデルは4パターン(NFTサミットレポート)
「GAFAMを倒すために:Make Japan Great Again!!」
完全自動運転が実現する2030年、人類は「移動の自由」を手に入れます。 スマートカーの登場は、我々の生活様式をスマホシフトの時以上に変えることでしょう。 今日のGAFAMにもあてはまる「人を集めたプレイヤーが勝つ」という原則に則れば、 今後は「人を集めた土地(経済圏)」が勝ちます。 その時にどうやってGAFAMを追い出すか? 同志の皆様にご提言いたします。
<スピーカー>
藤永 端 (代表取締役, テックジム株式会社)
はじめまして。テックジム藤永です。
本日は「自動運転レベル5」つまり、完全自動運転が実現する2030年のビジネスチャンスについてお話したいと思います。
運転免許証の不要な時代があと8年でやってきます。
2030年「スマートカーインパクト」
ところで、完全自動運転のクルマ、つまりスマートカーが市場に出てきて、ぱっと思い浮かぶことはなんでしょう?
まず、自動車業界の60兆円市場の10年分、つまり600兆円のスマートカーへの買い替え需要が予想されます。物流の無人化、無人バス・無人タクシーなどで、将来消える職業の従事者の数は100万人を超えることでしょう。
家賃の安いエリアへの移住、それによる地価の変動もありえます。
生活面では、子供の送り迎えも不要になるし、駐車場は遠くても大丈夫になります。
毎朝、送り迎えの車が家の前にやってくるので、社長気分で出勤できます。
1億総スマートカー保有の時代です。
今まで、都市部に住んでいた人は、便利だから何かと高くついても我慢してきましたが、それが馬鹿らしくなってきます。
みなさんはどんな光景を想像しますか?
私はこんなことを数年前から思い浮かべます。
田植え機の大名行列
これが私が見たい光景です。かっこよくないですか?
鹿児島から北海道まで桜前線の後を追いかけるように、ゾロゾロと大移動する光景です。
これだけで見物客を集められそうですね。
横断幕の広告枠を売ってもいいかもしれません。
今まで田植え機は買うものでしたが、本来は年に一回だけ田植えすることが目的なので所有権とかはどうでもいいわけです。
ですので、農業用スマートカーはシェアリングサービスとして普及すると思います。
過疎地の一発逆転
ここで一つ、スマートカー時代のもっとも重要なポイントをあげます。
それは、東京や都市部の一極集中が見直されるということです。
人々はそれぞれが感じる魅力的な土地に移り住みます。実家に住民票を移して、定住しない人も出てくるでしょう。
ここで、企業間のユーザベースの取り合いの時代は終わると私は読んでいます。魅力的なサービスや地域トークンの経済圏を作れた土地に、人は集まり、ますます豊かになります。
これからは地方自治体同士の人の取り合いです。いかに住まわせるか、いかに遊びに来てくれるかの戦いです。過疎地の一発逆転と書いたのは、2030年に全国土で一斉に完全自動運転スタートとはいかないからです。
まずは市町村のせまいエリアからのスタートとなるでしょうから、早く実現したところから注目が集まります。関係筋によると、都市部でのレベル5実現は、2040年までかかると言われているようです。
用途ごとに多様なビジネスモデル
ところで、自動運転になると、移動時間を楽しむサービスが考えられます。
宿泊、飲食、銭湯、カラオケ、バンド練習、自習室、仮眠室、など、いろいろと考えられます。
この移動時間はスマートカーが私たちにくれた可処分時間というプレゼント、ビジネスチャンスの宝庫と言えます。
どの業者と組んで、どんなサービスを提供して、どんな課金体系で、と考えると無数にビジネスアイデアが浮かんで来ると思います。
後ほど述べますが、完全自動運転系サービスのビジネスモデルは4パターンあると私は考えます。
どのプレイヤーが覇権を握る?
では、どのプレイヤーが覇権を握るのでしょうか?
2000年代はドコモなどの通信キャリアが覇権を握りました。
彼らは、メーカーに端末を作らせて、プラットフォームを作りました。
通信キャリアがポータルとなり公式メニューを提供したわけです。
でも、スマートフォンの時代にはアップストアとグーグルプレイに置き換わってしまいました。次の時代では、通信事業者がスマートカーを発注することは考えにくいので、覇権をとるのは無理でしょう。
そして、2010年代はアップルとグーグルの時代です。
OSを載せることでプラットフォームを作りました。
スマホアプリの利便性が思いのほか良かったので、彼らは公式アプリのポータル化に成功しました。
では、次の時代はどうでしょうか?
車内で使うタッチパネル端末では、依然として彼らの独壇場かもしれません。
音楽サービスや動画サービス、ゲームなど、スマホアプリビジネスの延長だからです。
運転から自由になった人は大画面でスマホ体験を最大化するのでしょう。
これだけで彼らは十分儲かりますから、それ以上は欲張らず、何もしない方が得策です。
自動運転ならではのサービス(経産省は「サービスカー」と呼んでいる)は、車の外から予約したり決済したいですので、車載タッチパネルの公式メニューからじゃないとダメというのは非合理的です。ですので、勝手サイトとして自由に立ち上がることでしょう。
そういえば「じゃらん」や「ホットペッパービューティ」も勝手サイトです。GAFAMに搾取されずにビジネスをしています。たまたまスマホアプリ対応しているだけです。UberもAirBnBも勝手サイトです。
このように、実は、GAFAMに搾取されないビジネスモデルのインターネットサービスは昔からありますし、今もあります。
そして、自動運転ならではのサービスは、まさにこの分野となります。
つまり、PC画面やスマホ画面で完結しないサービスはすべて、実はGAFAMフリーなのです。
スマートカー時代に「公式サイト」はありませんということです。
では、スマートカー時代は誰が覇権を握るのか?
それは、ずばり「道路」です。
「道路」は公共のものなので、主体者は国、あるいは地方自治体、もしくは国民と言い換えてもいいでしょう。国民が覇権を握るのです。いや握らせるべきなのです。
ここからは、私からの提言になります。
検索は本当に必要なのか?希薄化するソーシャルグラフ。
その前に、GAFAMはスマートカー時代には脅威ではなくなるというお話をします。
まずグーグルです。
検索はインターネット上にあるものを探す仕組みです。
「とりあえずあそこに行けばなんとかなる」というのがスマートカーの時代です。
そもそもインターネット以前の暮らしをしていた人は不便だったでしょうか?
待ち合わせの時は不便だったかもしれません。それ以外はなんとかなったのです。
インターネットの時代に情報があふれるものだから、検索という目的が生まれたのです。
スマートカーの時代は、移動を楽しむという目的が生まれます。
人が集まっているという情報がわかれば、行ってみたくなります。
このように、クルマが移動の楽しむための提案をするのです。
提案を取捨選択すればいいのに、わざわざ検索は必要でしょうか?
次はアップル。彼らがアップルカーを作れば脅威になるでしょうか?
確かにアップルは世界人口の何割かのユーザベースを所有しています。
ユーザベースの所有が脅威ではないことは後ほど解説します。
次はフェイスブック。
すでにソーシャル疲れしている人は多く、プライベートで連絡を取り合う人はごく少数という人は多いようです。
インターネット以前から、人の友達キャパは変わらないのでしょう。
なにせ1日は24時間で変わらないのだから。
スマートカー時代は「あそこに行けばなんとかなる」の時代です。
わざわざ人とアポイントをとらなくても、仲良しの誰かがそこにいます。
大学時代のラウンジ、溜まり場のようなところが復活するでしょう。
アマゾンでの購入も面倒になってきます。
さまざまな移動販売車がやってくるのですから、そこで欲しいものを買えばいいんです。
フリーマーケットを検索する楽しみがメルカリでしたが、フリーマーケットを実際に歩き回る楽しみの復活がスマートカーの時代です。
探して買うのはもはや面倒なのです。
サプライヤーからしてみても、Amazonに出品するよりも、ちゃんと売り捌いてくれる自動販売車があれば、そこに卸すでしょう。
このように、移動の自由を手に入れた人類は、インターネット以前の楽しみをまた見出すことになります。
あ、最後のMを忘れてました。説明をしなくても脅威ではないような気がしませんか?
GAFAMに乗っ取られず、国内産業を守った国があった。
さて、今度はGAFAMをどうやって追い出すかの話をします。
すでにそれを実現した国、それが中国です。
すでに中国がやっているのだから、どの国もできるはずです。
GAFAMと訴訟するくらいなら、中国のマネをするべきです。
確かに日本国内のインターネットにグレートファイアウォールを設置すれば、国際問題になります。
しかしながら、それを回避する方法はあります。
それでは、私からの提言に入ります。
住民が覇権を握る街に人は集まる
これがスマートカーのビジネスモデルです。
まず、道路をインターネット化します。
自動運転の時代は数億台の車がインターネットにつながります。
もはや今の通信キャリアだけで6G回線を賄うのは不可能です。
だから「道路」が「通信キャリア」と同等の仕事をやるしかありません。
主体者は、道路公団なのか、国なのか、地方自治体なのか、どこになるのかわからないので「道路」という団体名にしておきます。
道路は税金でできますから当然、住民にも利益が享受されるべきです。
それが、収益分配と、無料Wi-Fi利用です。
この無料Wi-Fiが実は巨大なイントラネットで、海外には接続できません。
国民の税金で作ったものだから、海外に儲けさせてはならないわけです。
こうなると、道路Wi-Fiだけでいいやという人が増えます。
まるでNHKを不払いにしている人たちのように増えるでしょう。
今まで通信事業者は十分儲けて来ました。
そろそろ、水や電気、ガスのように公共のものになっていいんじゃないでしょうか?
国益を考えた場合に、道路Wi-Fiはフリーにして国民の可処分所得を増やし、海外勢を締め出すのが得策です。どうしてもGAFAMのサービスを使いたい方は、今まで通り各通信プロバイダと契約すればいいのです。
収益分配は地域専用のトークンで配ります。これにより東京などへのマネー流出を防げるので地域経済を活性化します。どうしてもトークンを円通貨に換金したい人は自治体に手数料を払って換金します。これは新たな税収となります。
資金集めから収益分配まで、水平分業のエコシステムをDAOで実現。
最後に、私たちサードパーティの未来についてお話をします。
それは「DAOカー」というビジネスモデルです。
DAOカーとは「スマートカーを活用したビジネスの分散型自律組織」のことです。
自動運転の時代はスマートカーを売って終わりということではなく、何らかのサービスを伴うシェアリングサービスがメインストリームになります。
スマートカーのサービスは、おおよそ4つのパターンが考えられます。
1つ目は、自動耕作や自動配送などの「自動役務」をサービスとして提供するものです。
2つ目は、お客さんを乗せる形で、移動空間を「ホテル」や「美容室」などに変えるようなサービスです。
3つ目は、自動販売サービスです。お米やお酒、DIYなどの重い物の販売、買取りサービス、本屋バスといったサービスです。
そして4つ目は無料送迎の広告モデルです。ディスプレイ広告の配信や、お店がお金を払う形の送客アフィリエイトです。
ここに、サードパーティにとってのビジネスチャンスがあります。
とはいっても、一社で全てを揃えることは不可能です。
どうやって実現をするのか?
その手法がWEB3的アプローチである「DAO」です。
先述の通り、自動運転車にまつわるDAOを「DAOカー」と私は名付けました。
車体を提供するプレイヤーや、システム提供、ポータル提供、資金提供など、各社がそれぞれの役割で提供して、一つのサービスが成立し、ユーザからの収益を適正に分配されるという仕組みです。
これを「田植え機の大名行列」に置き換えてみましょう。
海外のDAOカーに参加すれば外貨獲得となる。
こんな感じになります。
各プレイヤーは自社の強みを生かして横展開できます。他のDAOカーに参加すればいいことになります。
スマホ時代はスマホ画面でできること、つまり「スマホアプリ」だけを提供すれば良かったので一社でやるのが合理的でしたが、スマートカー時代は複数の企業体で提供する方が合理的になります。各社が成果報酬型でシステムや実機を貸し出すイメージです。
各社はどこかに専門特化すれば、色々なDAOカーから参加依頼がくるでしょう。
ある地方で成功したら、他の地域のDAOカーに参加。
このようにして、海外のDAOカーに参加すれば外貨獲得となります。
海外勢はまだ、インターネットの仮想空間の中だけで完結するサービスしか考えていないですが、ITベンチャーの今後の主戦場はスマートカーが及ぼすリアルの世界になるはずです。
それが8年後の世界です。
まとめ
以上が、私からの提言となります。
この話を聞いて、「GAFAMって恐れる心配はないんだな」と思っていただけたら幸いです。
今は目先のメタバースに興味津々だとは思いますが、実は8年後にまたドンちゃん騒ぎがあることを知っていただきたく、このプレゼンをさせていただきました。
私の希望的観測で未来を描いてみましたが、多少の違いはあっても、何個かは実現するかもしれません。
円安は進みますから、日本はまた輸出大国になるチャンスです。今度こそ、3度目の正直。海外市場で暴れまわりましょう。
参考)
自動走行ビジネス検討会報告書によると2025年には実証実験がほぼ終わる見込みで、私たちサードパーティも2026年には何らかのエントリーができそうです。あと3年で自動運転ビジネスの全体観が見渡せるはずです。自動運転カンファレンスもそのうちに開かれるでしょう。