IaaS・PaaS・SaaSの違いとは?具体例と管理範囲の比較表、DaaS・CaaSとの違いをわかりやすく解説

IaaS・PaaS・SaaSの違いは、クラウド事業者がどこまで用意し、利用者がどこから先を管理するかです。IaaSはサーバーやネットワークなどの土台だけを借りてOSから先は自分で管理し、PaaSはアプリを動かす環境まで借りて自分のアプリとデータを管理し、SaaSは完成したソフトをそのまま使ってデータと設定だけを管理します。

この記事では、3つの定義を米国国立標準技術研究所(NIST)の定義で確かめたうえで、管理する範囲の比較表、具体例、DaaSやCaaSとの違い、選び方とセキュリティの責任分担までを整理します。サービス名と仕様は各社の公式ページで確認しました(2026年10月15日確認)。

一言でいうと:何を借りて、何を自分で管理するか

種類正式名称借りるもの利用者が管理するもの主な利用者
IaaS(イアース/アイアース)Infrastructure as a Service仮想サーバー、ストレージ、ネットワークOS、ミドルウェア、アプリ、データインフラエンジニア
PaaS(パース)Platform as a Service上記+OS・実行環境(言語のランタイム、DBなど)アプリ、データ、一部の設定アプリ開発者
SaaS(サース)Software as a Service完成したアプリケーションデータ、ユーザー、設定一般の利用者・業務部門

料理にたとえると、IaaSは「キッチンと設備を借りて、食材選びから調理まで自分でやる」、PaaSは「下ごしらえと調理器具がそろった場所で、自分のレシピで作るだけ」、SaaSは「お店で完成した料理を食べる」に近いイメージです。下の層ほど自由度が高く、上の層ほど手間が少なくなります。

公式の定義(NIST SP 800-145)

IaaS・PaaS・SaaSという3分類は、NISTが2011年9月に公開した「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145)で定義されています(SP 800-145, The NIST Definition of Cloud Computing | CSRC)。要点を訳すと次のとおりです。

  • SaaS:事業者がクラウド上で動かすアプリケーションを使える。Webブラウザなどからアクセスし、利用者はネットワーク・サーバー・OS・ストレージはもちろん、アプリの機能そのものも管理しない(利用者ごとの限られた設定は除く)。
  • PaaS:事業者が対応する言語・ライブラリ・ツールで作った自分のアプリを、クラウド上に配置できる。利用者はネットワーク・サーバー・OS・ストレージは管理しないが、配置したアプリと、実行環境の設定は管理できる。
  • IaaS:CPU、ストレージ、ネットワークなどの基本的な計算資源を借り、OSを含む任意のソフトを動かせる。利用者は物理的な基盤は管理しないが、OS・ストレージ・配置したアプリを管理し、ホストのファイアウォールなど一部のネットワーク機能も制御できる。

AWSも公式の解説ページで、IaaS・PaaS・SaaSを伝統的な3分類として紹介しつつ、「定義は会社によって異なる」と書いています(SaaS vs PaaS vs IaaS – Types of Cloud Computing – AWS)。境界があいまいなサービスもあるので、分類は「どこまで自分で管理するか」の目安と考えるのが実用的です。

管理する範囲の比較(責任共有モデル)

Microsoftは、IaaS・PaaS・SaaSごとに利用者とMicrosoftのどちらが責任を持つかを表で公開しています(クラウドでの共同責任 – Microsoft Azure | Microsoft Learn)。その表を整理すると次のようになります。

責任の領域オンプレミスIaaSPaaSSaaS
データ・構成と設定・IDとユーザー利用者利用者利用者利用者
クライアントデバイス利用者利用者利用者共有
アプリケーション利用者利用者共有共有
ネットワークコントロール利用者利用者共有事業者
OS利用者利用者事業者事業者
物理ホスト・物理ネットワーク・データセンター利用者事業者事業者事業者

大事なのは一番上の行です。同じページには、どの種類でもデータとIDは利用者のものだと明記されています。SaaSであっても、パスワードの管理、権限の設定、共有範囲の設定ミスによる情報漏えいは利用者の責任になります。AWSも同じ考え方を「責任共有モデル」として公開しており、IaaSにあたるAmazon EC2では、ゲストOSの管理(更新やセキュリティパッチ)、自分で入れたソフト、セキュリティグループ(ファイアウォール)の設定が利用者の責任だと説明しています(Shared Responsibility Model – Amazon Web Services)。

具体例:大手3社のサービスで見る違い

種類AWSGoogleMicrosoft
IaaSAmazon EC2(仮想サーバー)Compute EngineAzure Virtual Machines
PaaSAWS Elastic BeanstalkApp EngineAzure App Service
SaaS-Google Workspace(Gmail・ドキュメントなど)Microsoft 365

SaaSは身の回りにたくさんあります。GmailやGoogleドキュメント、オンライン会議、チャットツール、クラウド会計ソフトなど、ブラウザでログインしてすぐ使える業務アプリの多くがSaaSです。顧客管理(CRM)のSalesforceも、運営会社自身がSaaSとして解説しています(SaaSとは? | セールスフォース・ジャパン)。

同じ「データベース」でも、EC2にデータベースを自分でインストールすればIaaSの使い方、事業者が運用を引き受けるマネージドデータベースを使えばPaaSに近い使い方になります。サービス名ではなく、使い方で考えると混乱しません。

DaaS・CaaS・FaaSとの違い

3分類のほかにも「○aaS」という言葉があります。NISTの定義にはない、後から使われるようになった呼び方です。

略語意味例近い分類
DaaSDesktop as a Service。WindowsなどのデスクトップをクラウドのPCとして使うAmazon WorkSpaces、Azure Virtual DesktopIaaSとSaaSの中間
CaaSContainers as a Service。コンテナを動かす環境を借りるGoogle Kubernetes Engine(GKE)、AWS FargateIaaSとPaaSの中間
FaaSFunction as a Service。関数単位でコードを置き、呼ばれたときだけ動く(サーバーレス)AWS Lambda、Cloud Run functionsPaaSの一種として扱われることが多い

Google Cloudの解説では、CaaSは「IaaSの一部または拡張と見られることもある」もので、仮想マシンの代わりにコンテナを主な資源として使う、と説明されています(PaaS vs IaaS vs SaaS: What’s the difference? | Google Cloud)。なお、Azure Virtual Desktopの公式ページでは、旧方式の「Azure Virtual Desktop クラシック」を2026年9月30日に廃止し、以後はクラシックのリソースへの接続をブロックすると告知されています(現行のAzure Virtual Desktop自体は提供中、2026年10月15日確認)。

どれを選ぶか:目的別の目安

やりたいこと向いているもの理由
メール・ファイル共有・会計など、業務ですぐ使いたいSaaS契約してアカウントを作ればすぐ使える。運用は事業者まかせ
自社で作ったWebアプリを公開したいPaaS(またはCaaS)OSの更新やサーバー管理をせず、コードとデータに集中できる
既存のサーバーをそのままクラウドへ移したい、OSの設定を細かく変えたいIaaSOSから自由に選べ、オンプレミスと同じように扱える
社員のPC環境をまとめて管理したいDaaSデスクトップを中央で管理でき、端末にデータを残しにくい

多くの会社では、業務はSaaS、自社サービスはPaaSやCaaS、特殊な要件のシステムだけIaaS、のように組み合わせて使っています。

選ぶときに確認したい注意点

  • データの持ち出し:PaaSやSaaSは事業者独自の仕組みに依存しやすい(ベンダーロックイン)。データを標準的な形式で書き出せるかを先に確認する。
  • 料金の形:IaaSやPaaSは使った分だけの従量課金が中心で、止め忘れたサーバーにも料金がかかる。予算アラートを設定しておく。SaaSは1ユーザーあたりの月額が多い。
  • 責任の範囲:IaaSではOSのセキュリティ更新は利用者の仕事。SaaSでも、アカウントと権限、共有設定は利用者の仕事。
  • サービスの終了:クラウドのサービスや旧方式は終了することがある(上のAzure Virtual Desktop クラシックのように)。公式の告知を確認する。

どこからでも安全に使うための考え方は「ゼロトラストとは?」、AWSを体系的に学ぶなら「AWS認定資格の一覧と受験料」、サーバーの設定をコードで管理する方法は「IaC(Infrastructure as Code)とは?」で解説しています。

よくある質問

Q. IaaS・PaaS・SaaSの違いを簡単に言うと?

事業者に任せる範囲の違いです。IaaSはサーバーなどの土台だけを借りてOSから先を自分で管理し、PaaSはアプリを動かす環境まで借りて自分のアプリとデータを管理し、SaaSは完成したソフトを使ってデータと設定だけを管理します。

Q. IaaS・PaaS・SaaSの具体例は?

IaaSはAmazon EC2やGoogleのCompute Engine、PaaSはAWS Elastic Beanstalk、Google App Engine、Azure App Service、SaaSはGoogle WorkspaceやMicrosoft 365、Salesforceなどです。

Q. DaaSとは何ですか?SaaSとの違いは?

DaaSはWindowsなどのデスクトップ環境をクラウド上のPCとして使うサービスで、Amazon WorkSpacesやAzure Virtual Desktopが例です。SaaSが特定のアプリを提供するのに対し、DaaSはデスクトップ全体を提供します。

Q. SaaSならセキュリティは事業者に任せてよいですか?

いいえ。Microsoftが公開している責任分担の表でも、データ、アカウント(ID)、構成と設定はどの種類でも利用者の責任とされています。パスワード管理や共有範囲の設定は利用者側で行う必要があります。

Q. 個人で学ぶならどれから触ればいいですか?

アプリ開発を学ぶならPaaSで自分のWebアプリを公開してみるのが手軽です。サーバーやネットワークの仕組みを学びたいなら、IaaSで仮想サーバーを1台立ててOSから設定してみると、3つの違いが実感できます。

インフラまわりの全体像はインフラ・ネットワークの基礎で、クラウド・コンテナ・ネットワークを3つの軸で整理しています。

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