AWSはオワコン？クラウド市場の現状と未来を徹底解説

「AWSはもうオワコンだ」「そろそろ新しいクラウドに乗り換えるべきでは？」――そんな声が聞こえてくる昨今、実際にAWSの勢いは衰えているのでしょうか？本記事では、2025年現在のクラウド市場の状況とAWSの立ち位置を客観的に分析し、「AWSオワコン」説の真相に迫ります。

「オワコン」の真意は？市場の成熟と競争激化

まず、「オワコン」という言葉が何を指しているのかを明確にする必要があります。もし、AWSが市場から完全に消え去るという意味であれば、それは断じて間違いです。AWSは現在もクラウド市場のリーダーであり、その影響力は計り知れません。

しかし、かつての爆発的な成長率が鈍化しているのは事実です。これは、「クラウド市場の成熟」と「競争激化」という二つの大きな要因に起因しています。

市場の成熟：高成長期から安定期へ

クラウドコンピューティングは、もはや一部の先進企業が導入する特別な技術ではなく、あらゆる業界の企業にとって当たり前のインフラとなりました。初期の導入が一段落し、市場全体が安定期に入ったことで、以前のような急激な成長は難しくなっています。

AWSが2015年に70%近い成長率を記録していた時期と比較すると、2025年第1四半期の成長率は17%と減速しています。これは、市場全体が拡大しきった結果であり、AWSが「終わった」ことを意味するものではありません。

競争激化：Azure、Google Cloudの猛追

AWSの最大の競合であるMicrosoft AzureとGoogle Cloud Platform (GCP)は、近年著しい成長を遂げています。特にAzureは、既存のMicrosoft製品との連携やハイブリッドクラウド戦略で強みを発揮し、AWSとの差を縮めています。Google CloudもAI/ML分野の強みを活かし、市場での存在感を高めています。

2025年第1四半期時点での市場シェアを見ると、AWSが約30〜32%で首位を維持しているものの、Microsoft Azureが約20〜23%、Google Cloudが約12%と続き、三つ巴の戦いが繰り広げられています。かつてAWSの一強時代とは異なり、各社がしのぎを削る状況が「AWSオワコン」という感覚を生み出しているのかもしれません。

2025年のAWS：盤石なリーダーシップと進化の戦略

では、現在のAWSはどのような状況にあるのでしょうか？データと戦略からその実像を見ていきましょう。

圧倒的な市場シェアと収益力

AWSは、2025年第1四半期に約$293億の売上を計上し、年間換算で$1,170億のランレートを記録しています。これは、クラウドインフラサービス市場において依然として圧倒的な規模であり、他の追随を許しません。

多くの企業（特にスタートアップや中小企業）がAWSを利用しており、その顧客基盤は盤石です。また、金融、メディア、製造、教育、小売など、幅広い業界で高い需要を維持しています。

AI/ML分野への巨額投資と戦略的提携

「AWSオワコン」説が的外れである最大の理由は、AWSがAI/ML分野に巨額の投資を行い、積極的に進化を続けている点です。

• 独自チップの開発: AIワークロードのコスト効率とパフォーマンスを最適化するため、AWSはTrainium2などの独自チップの開発に力を入れています。これにより、NVIDIAベースのソリューションよりも30～40%優れた価格性能を実現しているとされます。

• Generative AIの強化: Amazon NovaモデルやLuma AIのRay2といった新しいAIビデオモデルなど、Bedrockを強化し、生成AIサービスを拡充しています。

• データセンターへの大規模投資: AIサービスの提供とクラウドインフラの可用性拡大のため、2025年にはデータセンターに$1,000億規模の投資を計画しています。チリに新たなクラウドリージョンを設立するなど、グローバル展開も加速しています。

• NVIDIAとのパートナーシップ強化: AI分野の進化を加速させるため、NVIDIAとの長年のパートナーシップも強化しています。

産業特化型ソリューションとハイブリッドクラウド

AWSは、特定の業界に特化したクラウドソリューションの提供にも注力しています。また、オンプレミス環境との連携を求める企業ニーズに応えるため、Outpostsなどのハイブリッドクラウド戦略も強化しています。これにより、セキュリティやコンプライアンス要件の厳しい業界にも対応し、より幅広い顧客層を取り込んでいます。

持続可能性への取り組み

AWSは、2025年までにデータセンターで使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げ、持続可能性への取り組みも強化しています。これも企業の評価を高め、長期的な競争力に繋がっています。

まとめ：AWSは「オワコン」ではない、だが「変化」は必要

結論として、「AWSはオワコン」という表現は、現状を正しく捉えていません。AWSは依然としてクラウド市場の圧倒的なリーダーであり、積極的な投資と進化を続けています。

しかし、市場の成熟と競争激化の中で、その成長速度が鈍化しているのは事実です。この状況は、ユーザーにとっても、より適切なクラウドサービスを選定し、コスト効率を最適化するための良い機会と捉えることができます。

企業は、AWSの進化するサービス群を理解し、自社のビジネスニーズに最も合致する形で活用していくことが重要です。また、マルチクラウドやハイブリッドクラウドといった柔軟な戦略も視野に入れることで、AWSだけでなく、他のクラウドプロバイダーの強みも取り入れ、最適なITインフラを構築していくことが求められるでしょう。

AWSが「オワコン」なのではなく、クラウドの利用戦略自体が、より高度に、より戦略的に変化していると言えるでしょう。