プログラミング初心者にAIをどう使わせる?教える側が決めたい3つのルールと「Copilotは入れない」理由

プログラミング初心者にAIをどう使わせる?教える側が決めたい3つのルールと「Copilotは入れない」理由

プログラミング初心者にAIを使わせるべきか迷ったら、禁止するより「使い方のルール」を決めるのが現実的です。筆者が教える側にすすめているのは、エディタにGitHub Copilotなどの自動補完は入れない、エラーの意味はAIに聞いてよいが修正は自分の手でやる、AIにコードを書かせない、の3つです。この記事では、研修担当者や先生、子どもに教える保護者など「初心者に教える立場」の人に向けて、このルールの理由と運用のコツ、Copilotを解禁するタイミングを解説します。

この記事は、テックジム代表が配信しているメルマガ「グラさん通信」の内容をもとに、加筆・再構成したものです。

初心者にAIを使わせるべき?禁止より「ルール」が現実的な理由

「初心者のうちはAIを触らせたくない」。新人研修の担当者や、学校・教室で教えている方から、筆者(テックジム代表)はこうした相談をよく受けます。AIに頼ると自分で考えなくなるのでは、という心配はもっともです。

それでも筆者は、全面禁止はおすすめしません。理由は2つあります。

  • 本人は、誰が何と言おうとAIを使う。手元のスマートフォンでも、ブラウザでも、AIはいつでも開ける。禁止しても見えないところで使われるだけで、教える側が使い方に関われなくなる
  • AIを使わないほうが、かえって挫折しやすいことがある。エラーで何十分も詰まり、「自分でやり切れ」と言われて心が折れてしまったら元も子もない

プログラミングの上達は、書く、動かす、間違える、直す、というサイクルを人より多く回すことで決まります(トライ&エラーとPDCAサイクルで学習効率を最大化する方法)。このサイクルを止めてしまう「詰まり」を取り除くのは、AIがもっとも得意とするところです。だから、学習のサイクルを速くする場面ではAIを使い、学習にならない場面ではAIに頼らない。その線引きをルールとして示すのが、教える側の仕事です。

教える側が決めておきたい3つのルール

筆者がすすめているのは、次の3つです。受講生の性格や習熟度を見て、適度にアレンジしてください。

ルール ねらい 許すこと
1. エディタにCopilotなどの自動補完を入れない 1行ずつ自分の手で書き、文法と書き方を体で覚える ブラウザのAIチャットで質問すること
2. エラーはAIに聞いてよいが、修正は自分でやる エラーの意味を理解し、自分で直す経験を積む エラー文を貼って原因を説明してもらうこと
3. AIにコードを作らせない 課題を自分で組み立てる力を残す 文法や関数の使い方、考え方を聞くこと

3つに共通するのは、「AIに聞くのはよいが、手を動かすのは本人」という線です。AIを家庭教師として使うのはかまわない。ただし宿題を代わりにやらせてはいけない、というイメージです。

このルールで運用すると、AIの良いところだけを取り入れられます。詰まる時間は短くなり、それでいて自分で書く量は減りません。

なぜCopilot(自動補完)は初心者のエディタに入れないのか

GitHub CopilotをVS Codeに入れると、コードを書いている途中で、続きの候補が薄い文字で表示されます。Tabキーを押すだけで、関数まるごと書き上がることも珍しくありません。熟練者にとっては便利な機能ですが、初心者にとっては学習の機会を奪いかねません。

  • 考える前に答えが出てくる。次に何を書くか自分で考える前に、候補が見えてしまう
  • 手が覚えない。for文や関数の書き方は、何度も自分で打つことで身につく。Tabキーで済ませると、その回数が減る
  • 読まずに受け入れてしまう。候補が正しいかどうか判断できない段階で、もっともらしいコードがどんどん入ってくる

AIチャットに質問する場合は、自分で疑問を言葉にして、答えを読み、自分で書き直すという手間がかかります。この手間こそが学習になります。自動補完はその手間をまるごと省いてしまうので、初心者の段階では入れないほうがよい、というのが筆者の考えです。

VS CodeでAI機能を止めておく方法

最近のVS Codeは、Copilotのチャットやインライン補完が標準の機能として組み込まれています。2026年10月時点の公式ドキュメントでは、次の設定で止められると案内されています。

  • AI機能をまとめて止める:設定で「chat.disableAIFeatures」を有効にすると、チャットやインライン補完などの組み込みAI機能が無効になり、非表示になります。ワークスペース単位でも設定できます
  • インライン補完だけを止める:「github.copilot.enable」で、言語ごとにインライン補完の有効・無効を切り替えられます

研修用のPCをまとめて準備する場合は、配布する前にこの設定を入れておくと迷いがありません。設定名や画面は更新で変わることがあるので、実際の操作は公式ドキュメントで確認してください。VS Codeの基本的な設定はVS Codeの使い方入門で紹介しています。

「エラーは聞いてよい、修正は自分で」の線引きに根拠はあるか

2つめのルールについては、研究の裏づけもあります。Anthropicの研究者が2026年に発表した実験では、Pythonの経験が1年以上ある主に若手の開発者52人を、AIを使えるグループと使えないグループに分け、初めて触るライブラリを使った課題に取り組ませました。そのあとの理解度テストでは、AIを使ったグループの得点が、使わなかったグループより17%低い結果でした。差がもっとも大きかったのは、デバッグに関する問題です。

ただし、AIを使ったグループのなかでも、使い方によって結果は大きく分かれていました。

得点が低かった使い方 得点が高かった使い方
コードの作成をAIに丸ごと任せる 概念的な質問だけをして、コードは自分で書く
だんだんAIへの依存を強めていく 生成されたコードと一緒に、その説明も求める
エラーが出るたびにAIに直してもらう 生成させたあとで、追加の質問をして理解を深める

「エラーが出るたびにAIに直してもらう」使い方は、まさに初心者がやりがちなパターンです。一方で「意味や考え方を聞いて、自分で書く」使い方なら、理解は損なわれにくい。エラーの意味は聞いてよいが修正は自分で、というルールは、この結果ともよく合っています。

高校生を対象にした別の研究でも、AIの使い方しだいで学習効果が分かれることが報告されています。詳しくはAIを使うと頭が悪くなる?高校生約1,000人の実験で紹介しています。

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初心者にどう声をかける?AIへの聞き方の具体例

ルールを決めても、「どこまで聞いてよいのか」がわからないと、初心者は結局コードを丸ごと頼んでしまいます。教える側が、聞いてよい質問の例を最初に見せておくと運用しやすくなります。

場面 すすめる聞き方 避けたい聞き方
エラーが出た 「このエラーメッセージはどういう意味?原因として考えられることを教えて。修正後のコードは書かないで」 「このコードを直して」
書き方がわからない 「Pythonでリストの要素を順番に取り出すにはどんな書き方がある?短い例だけ見せて」 「〇〇を作るプログラムを書いて」
意味がわからない 「この1行は何をしている?初心者向けに説明して」 (わからないまま先へ進む)
何度聞いてもわからない 「さっきの説明をもっとかみ砕いて。たとえ話で」 (聞き直すのをためらう)

「修正後のコードは書かないで」と最初に添えるだけで、AIは原因の説明にとどめてくれます。同じことを何度聞いてもかまわない、と教える側がはっきり伝えておくことも大切です。初心者は「こんなことを何度も聞いていいのか」と遠慮しがちですが、AIなら気兼ねはいりません。AIを学習に使う方法の全体像はプログラミング学習にAIを活用する方法にもまとめています。

Copilotはいつ解禁する?習熟度ごとの目安

自動補完を入れない、というのはあくまで初心者のうちのルールです。ある程度書けるようになったら、むしろ積極的に使ってよいと筆者は考えています。

段階 AIの使い方の目安
入門(変数・条件分岐・繰り返しを覚える段階) 自動補完なし。AIチャットには意味や考え方だけを聞く
基礎(関数やクラスを使って小さなプログラムを書ける段階) 自動補完なし。エラーの原因はAIに聞き、修正は自分で
応用(フレームワークを使って開発する段階) Copilotなどの自動補完を解禁。意味がわからない行はAIに聞き直す

フレームワークを使う段階になると、決まった書き方や長い名前が増え、タイプミスが頻発します。ここでの打ち間違いを探す作業は、学習としての価値が高くありません。フレームワークの便利さを享受すべきところは、AIの補完も遠慮なく使えばよいのです。

ただし、補完されたコードをそのままにしないこと。意味がわからない行があれば、またAIに聞けばよいのです。昔は、フレームワークのお決まりの1行1行の意味を、よくわからないまま読み飛ばして使っていた人も少なくありませんでした。AIに気軽に聞ける今は、その1行の意味まで確かめながら進められます。この点では、AIのおかげで学び方がひとつ進化したと言えるでしょう。Copilotそのものの機能や使い方はGitHub Copilot完全ガイドで解説しています。

研修や授業でルールを形だけにしないコツ

ルールは決めただけでは守られません。教える側が、ルールが機能しているかを確かめる仕組みを用意しておきましょう。

  • 書いたコードを口頭で説明してもらう。「この行は何をしているの?」と聞いて答えられれば、AIに頼っていても理解はできている
  • 同じ課題を、AIなしでもう一度書いてもらう。書けたらその課題は卒業
  • AIとのやり取りを見せてもらう。どんな質問をしたかを見れば、丸投げしているかどうかはすぐわかる
  • ルールは人を見て調整する。すぐ心が折れる人には聞いてよい範囲を広げ、AIに頼りすぎる人には「まず10分は自分で考える」などの条件を足す

学ぶ側に向けたAIとの付き合い方は、生成AIでプログラミング学習はどう変わった?で、テックジムの受講生向けのルールとして紹介しています。教える側と学ぶ側でルールの考え方をそろえておくと、指導がぶれにくくなります。

まとめ:AIは「詰まり」を取る道具。手を動かすのは本人

  • 初心者からAIを取り上げても、見えないところで使われるだけ。禁止より使い方のルールを決める
  • 基本の3ルールは、Copilotなどの自動補完を入れない、エラーは聞いてよいが修正は自分で、AIにコードを書かせない
  • 自動補完は考える前に答えが出てしまうため、入門・基礎の段階では外しておく。VS Codeでは設定で止められる
  • 研究でも、コードを丸投げしたりエラーのたびに直してもらったりする使い方は理解度が低く、概念を聞いて自分で書く使い方は理解が保たれやすかった
  • フレームワークを使う段階になったら自動補完を解禁し、わからない行はAIに聞き直す
  • 説明させる、AIなしで書き直させる、やり取りを見せてもらうことで、ルールが機能しているか確かめる

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