プログラミングにコーチは必要?AIがデバッグも解説もする時代に人間が要る3つの理由

プログラミングにコーチは必要?AIがデバッグも解説もする時代に人間が要る3つの理由

AIがエラーの原因を教え、コードの解説もしてくれる今でも、プログラミングの学習に人間のコーチは必要です。ただし、その役割は「教える人」から「見守る人」に変わりました。筆者(テックジム代表)は、AIで不要になったのは説明と調べものであり、書き方の癖を直すこと、詰まった瞬間にそばにいること、進むか立ち止まるかを判断することは、今も人間にしかできないと考えています。この記事では、AI時代にコーチが要る3つの理由と、公文式や武田塾に学ぶ「教えない指導」、コーチのいる学び方の選び方を解説します。

この記事は、テックジム代表が配信しているメルマガ「グラさん通信」の内容をもとに、加筆・再構成したものです。

結論:AI時代のコーチは「教える人」ではなく「見守る人」

ChatGPTやGeminiなどの生成AIが広まり、バグへの対処や、わからない部分の解説は、人間でなくてもできるようになりました。プログラミングスクールの「質問し放題」や「動画見放題」の価値は、AIの登場で大きく下がったと言ってよいでしょう。

それでも筆者は、人間のコーチは要ると考えています。理由は、学習の成否を分けるのが「知識を得ること」より「正しいやり方で繰り返し書くこと」だからです。正しい学習法や正しいコーディングの仕方への助言は、エンジニアを育てた経験のある人が、学ぶ人の手さばきと目の動きを見て初めてできます。

どんなプロの世界でも、人のコーチがその人の伸び方を左右します。スポーツ選手がITツールで自分の動きを分析していても、最後に助言するのは人です。プログラミングも同じだと筆者は考えています。

AIで不要になったこと、まだ人間がやること

まず、生成AIで何が変わったのかを整理しておきます。

学習の場面 以前 いま
エラーの解決 何時間も自力で原因を探す AIが原因と修正案を秒で示す
わからない部分の解説 講師に質問するか、検索して記事を読む AIにその場で何度でも聞ける
サンプルコードと仕様変更 教科書や講師が用意する AIに作らせ、書き換えさせられる
書き方の癖の矯正 人が手元を見て直す 今も人が手元を見て直す
詰まったときの手助け そばにいる人が助ける 今もそばにいる人が助ける
進むか立ち止まるかの判断 講師が進捗を見て決める 今も人が判断する

たとえばGoogle Colaboratoryでは、セルを実行してエラーが出ると、Geminiにエラーの説明と修正案を出させる機能が用意されています。テックジムも創業当初は「エラーを自力で解決することこそ学習の本質」と考えていましたが、検証を重ねた結果、デバッグはAIに任せて、浮いた時間を復習の回数に回すほうが効率的だという結論に至りました。生成AIで学び方がどう変わったかは生成AIがどのように変えた?ChatGPT時代のプログラミング教育とはでも解説しています。

表の下の3行が、AIの時代になってもコーチが必要な理由です。順に見ていきます。

理由1:手元を見なければ直せない癖がある

プログラミングの上達を妨げる癖の多くは、書き上がったコードには表れません。表れるのは、書いている最中の手の動きです。

  • ショートカットを使わず、毎回マウスでメニューを探している
  • 変換候補をうまく使えず、入力に時間がかかっている
  • 上から順に書かず、あちこちに飛びながら書いて混乱している
  • 1回で理解しようとして、手を止めて考え込んでいる

こうした癖は、AIにコードを見せても指摘されません。ワンオンワンの質問対応やオンラインの画面共有でも、手元までは見えません。横に座って書く様子を見ている人だけが気づき、その場で直せます。

筆者が運営する短期集中の講座では、コーチが抜き打ちで受講者のコーディングを見て、テストのときは張り付いて手元を確認します。様子がおかしければ、翌日のメニューを変えます。同じカリキュラムでも、取り組み方を変えて解かせるのです。開始時には前日のおさらい、帰り際には翌日の打ち合わせをします。これは、筆者が開発現場でプロジェクトマネージャーとしてやってきたことを、学習に応用したものです。

理由2:「詰まったとき」にそばにいる人がいる

筆者の知人に、動画編集をClaude Codeで自動化したいと、ターミナルの操作に挑戦していた人がいます。どうにも先に進めず固まっていたので、横から「そこはこうやるんだよ」とひと言伝えたところ、こう言われました。「一人だったらできなかった」。

AIは何でも答えてくれますが、自分が何につまずいているのかを言葉にできないと、正しい質問ができません。初心者ほど、この状態に陥ります。そんなとき、画面を見て「ああ、ここですね」と指をさしてくれる人がいるかどうかで、その日のうちに進めるかどうかが決まります。

筆者は、AIの時代は、人に助けを求めてよい時代だと考えています。AIのおかげで多くの人に時間の余裕が生まれ、人を助ける余力ができたからです。すべてを自分ひとりでやろうとするのは、今の時代に合っていません。

講師の存在意義も変わりました。その場にいて、学ぶ人が詰まったときに手を貸すことです。プロ野球のコーチがオンラインで指導しないのと同じで、それは一方的な講義やオンラインの画面越しでは難しいことです。

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理由3:進むか立ち止まるかの「さじ加減」は人にしかできない

AIは答えを教えてくれます。それは便利な一方で、学ぶ側を受け身にします。AIの解説を読んで理解したように感じても、いざ自分で書こうとすると書けない。それでもカリキュラムは進むので、だんだん苦しくなっていきます。

カリキュラムをただ進めることが正しいとは限りません。時には立ち止まって、同じ問題をもう一度解いたほうがいいこともあります。逆に、理解が追いついていなくても、先に進んだほうが後で腑に落ちることもあります。このさじ加減を、学ぶ人の様子を見ながら判断するのが人間の役目です。

もうひとつ大事なのが、「どうしてもプログラミングを書けるようになりたい」という気持ちを萎えさせないことです。多くのスクールは、この気持ちを持続させようと、チューター制度や朝礼・終礼、フィードバックの時間を設けてきました。しかし、それが画一的な仕組みになると、教える側にも学ぶ側にも心理的な負担がかかり、かえって気持ちが萎えてしまうことがあります。

必要なのは、横にいる人です。時には「大変ですよね」と共感し、時には「ちょっと自分で考えてみましょう」と突き放す。それはマニュアルで決められるものではなく、多くの人を教えてきた経験から出てくる判断です。ChatGPTを学習の相棒にする方法はChatGPT活用プログラミング学習法|独学の挫折を防ぐメンター術で紹介していますが、AIを相棒にするほど、こうした人間の判断の価値は上がると筆者は見ています。

公文式と武田塾に学ぶ「教えない」指導

筆者が「見守るコーチ」の原点として思い出すのは、小学1年生のときに通った公文式の教室です。教室の先生は採点をするだけで、決して教えてくれませんでした。それなのに、算数ができるようになったのです。一方、学校の先生は一生懸命に教えてくれるのに、なぜか頭に入ってきませんでした。

公文式の教材は、書いているうちに自分で法則に気づくように作られています。たとえば「1 + 1 = 2」「1 + 2 = 3」と解いてきた子に、「では1 + 3は?」と問う。現象として眺めれば答えを推測でき、間違えても何度も書くうちに自然に身につきます。筆者が以前読んだ創始者の公文公氏の著書には、昭和の時代に教育者から「それでは自分で考え抜く力がつかない」と批判されたことが記されていました。しかし筆者は、まず手を動かして慣れ、理解はあとからついてくるという順序こそ、プログラミングに向いていると考えています。公文式の特徴は公文式はどこがすごい?選ばれ続ける7つの理由でも詳しく紹介しています。

大学受験の武田塾も、「授業をしない」ことを掲げる塾として知られています。公式サイトによれば、授業でわかるのは「わかる」の段階までで、「できる」ようにするのは自学自習だという考え方のもと、毎日の宿題を指定し、週ごとの確認テストで本当にできるようになったかを確かめ、合格しなければ同じ範囲を繰り返す仕組みをとっています。教える代わりに、進み具合を見守り、管理する人がいるからこそ、自学自習が成り立っているわけです。武田塾の方式は武田塾の革新的教育メソッドがすごい理由でも取り上げています。

AIは、公文式のように「自分で書いて気づく」学習を、誰にでも成立させてくれます。ただ、それだけでは学習体験は完成しません。公文式の教室で採点していた先生のような、見守る人の存在が欠かせないのです。

コーチのいる学び方を選ぶときのポイント

これからプログラミングを学ぶ人が、コーチのいる環境を選ぶときに確かめたいポイントを挙げます。

  1. 書いている手元を見てもらえるか:質問に答えるだけでなく、書く様子を見て助言してくれるかどうか
  2. 詰まったときにすぐ声をかけられるか:予約制の面談だけでなく、その場で質問できる時間があるか
  3. 進み方を一緒に調整してくれるか:決まったスケジュールを押しつけるのではなく、理解度に合わせて立ち止まったり進んだりできるか
  4. 教えることより書かせることを重視しているか:授業や動画を見る時間より、自分で書いて試す時間が長いか
  5. 通う場所があるか:自宅ではなく「そこに行けば学ぶ」と決められる場所があるか

最後の点は意外に大きいと筆者は考えています。子どもたちがオンライン塾より通学塾を選ぶのは、「行けばなんとかなる」と感覚的に知っているからでしょう。筆者自身も、家では筋トレをしないので、朝起きたら「今日はパーソナルジムに行く」とだけ決めます。行けば同じように頑張っている人がいて、自分も頑張ろうと思えます。決めるのは「今日は行く」という気楽な一点だけです。テックジムという名前も、この体験から来ています。

対面で学べる環境を探している方は、プログラミングのオンライン学習が無理な人へ|対面・通学型スクールという選択肢も参考にしてください。

まとめ:AIが答えを教える時代だからこそ、見守る人が要る

  • デバッグ、解説、サンプルコードの用意はAIで足りるようになった
  • それでも、手元を見て癖を直すこと、詰まったときにそばにいること、進むか立ち止まるかを判断することは人間の役目
  • AIは答えを教えるぶん学ぶ人を受け身にしやすく、気持ちを支える人の価値はむしろ上がっている
  • 公文式の採点する先生や、武田塾の宿題と確認テストのように、「教えずに見守る」仕組みが自学自習を成り立たせる
  • コーチを選ぶなら、手元を見てもらえるか、すぐ質問できるか、通う場所があるかを確かめる

AIの時代のプログラミング学習は、AIを相棒にして自分で書き、人間のコーチに見守ってもらうという二人三脚がいちばんの近道です。実際に手を動かしながら体験してみたい方は、テックジムの無料講座をご利用ください。

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