生成AIでプログラミング学習はどう変わった?「デバッグをAIに任せるな」を撤回した理由

生成AIでプログラミング学習がどう変わったかを一言でいうと、「調べる・直す・聞く」にかかっていた手間がほぼゼロになったことです。その一方で、AIに任せたままではスキルは残りません。分かれ目は、AIに助けてもらったあとで、AIなしで書き直す工程を残しているかどうかです。筆者が運営するプログラミングスクールでも、以前は「デバッグをAIにさせてもスキルにならない」と教えていたのを、その後「デバッグはAIに任せてよい。ただし復習で自力に戻す」に改めました。この記事では、そのルール変更の理由と、ChatGPTやClaudeで学ぶときの具体的なルールをまとめます。
この記事は、テックジム代表が配信しているメルマガ「グラさん通信」の内容をもとに、加筆・再構成したものです。
生成AIでプログラミング学習は何が変わったのか
ChatGPTが一般に広まった2023年ごろを境に、プログラミングの学び方は大きく変わりました。筆者(テックジム代表)が現場で感じている変化を、前と後で並べると次のようになります。
| 場面 | 生成AI以前 | 生成AI以後 |
|---|---|---|
| 学ぶ順番 | 教科書や動画で基礎を学んでから書く | いきなり書き始め、わからないところをその場で聞く |
| 調べもの | 検索して、解説記事を何本も読み比べる | AIに質問すれば、自分の状況に合わせて答えが返ってくる |
| エラー | 原因探しに何十分も、ときには何日もかかる | エラー文を貼れば数秒で原因と修正案が出る |
| サンプルコード | 教材や公式ドキュメントに載っているものを探す | 作りたいものを伝えれば、その場で書いてくれる |
| 解説がわからないとき | 別の本や記事を探す | 「この部分をもっとかみ砕いて」と何度でも聞き返せる |
テックジムは2019年の創業当時から「教科書なし・授業なし」で、サンプルコードを書き換えながら覚える学び方をとってきました。わからないことがあれば調べるか講師に聞く、というやり方です。生成AIの登場で、この「調べる」と「聞く」の部分が、いつでも、何度でも、ほぼ無料でできるようになりました。
一方で、いくらAIが答えてくれても、受け身で読んでいるだけでは書けるようにはなりません。生成AIは、学び方しだいで最高の家庭教師にも、何も身につかない近道にもなります。生成AI時代の教育全体についての筆者の考えはChatGPT時代のプログラミング教育とはにも書いています。
「デバッグをAIに任せるな」から「任せていい」へ。ルールを変えた理由
テックジムでは、無料のPython入門講座をChatGPTを使う形にリニューアルしました。そのころ受講生に伝えていたルールの一つが「実行エラーのデバッグをGPTにさせても、スキルにはならない」でした。エラーを自分で解決することこそがプログラミング学習の核心だ、と考えていたからです。
ところが、講座を続けながら受講生の様子を見ていると、別の姿が見えてきました。
- エラーで長く詰まった人ほど、疲れて学習そのものをやめてしまう
- AIにエラーを直してもらった人のほうが、先に進めて、復習の回数を多くこなせる
- 最初はAIに直してもらっても、同じ問題を2回目、3回目と解き直すうちに、自力で書けるようになる
現場のエンジニアも、毎日のようにAIにデバッグを手伝わせています。プロが当たり前に使っている道具を、学ぶ人だけが封印する理由はありません。電卓があるのに、仕事で筆算にこだわる人はいないのと同じです。
そこで同じ年の終わりごろには、ルールを「デバッグはAIに任せてよい。ただし、最初に戻って、AIに頼らず書けるようになるまで復習する」に変えました。変えたのは「AIを使うかどうか」ではなく、「AIを使ったあとに何をするか」です。この条件を外すと、元のルールのとおり、スキルは残りません。
ChatGPT・Claudeでプログラミングを学ぶときの基本ルール
いまテックジムで受講生に伝えているルールは次の6つです。ChatGPTでもClaudeでも、ほかの生成AIでも同じです。
- 15分考えてわからなければ、答えを見てよい(AIに聞いてよい)
- 答えのコードはコピーして貼り付けない。見ながら書き写すのもしない。見たら伏せて、自分の手で書く
- 解説はいったん全部に目を通す(速読でよい)。わからないところは「今はわからなくていい」と割り切って先へ進む
- 気になったところは、部分を指定して聞き返す。「この行の意味は?」「AとBの違いは?」
- エラーはAIに説明させてよい。ただし直ったコードをそのまま写さず、原因を一言で言えるようにしてから自分で直す
- 復習はAIなしで解き直す。AIなしで書けたら、その問題は卒業
1と2は、受験勉強で赤本を使うときと同じ考え方です。わからなければ解答を見る。ただし解答を写すのではなく、なぜそうなるかを考えてから自分で解き直す。講座に参加した方が書いた体験記事でも、この「15分で答えを見てよい、でもコピペと書き写しはしない」というルールが印象に残ったと紹介されていました。
3の「わからなくていい」も大切です。理解できないところで止まってしまうのが、挫折のいちばん大きな原因だからです。何度も同じコードを書いているうちに、理解は後からついてきます。答えの見方と伏せて書く手順は神経衰弱式コーディングで詳しく紹介しています。
AI時代のプログラミングの学び方や、教える現場で変わったことを、テックジム代表が毎週メルマガ「グラさん通信」でお届けしています(読者1万人超・登録無料)。
スキルになるAIの使い方・ならない使い方
同じAIの使い方でも、その後の行動しだいでスキルになるかどうかが分かれます。筆者が受講生を見てきて整理すると、次のようになります。
| 使い方 | スキルにならない場合 | スキルになる場合 |
|---|---|---|
| コードを書いてもらう | コピーして貼り付け、動いたら終わり | 伏せて自分で書き直し、一部を変えて試す |
| 解説してもらう | 読んで「なるほど」で終わる | わからない部分を指定して聞き返し、自分の言葉で言い直す |
| エラーを直してもらう | 修正版をそのまま貼る | 原因を一言で言えるようにしてから、自分で直す |
| 練習問題を出してもらう | 解けないとすぐ答えを出してもらう | 15分は自力で書き、答えを見たら日を置いて解き直す |
| 作りたいものを丸ごと作ってもらう | 中身を読まずに使う | 関数ごとに何をしているか説明できるまで読む |
共通しているのは、AIの出力を「読む」「書き直す」「説明する」の3つのどれかで、自分の頭と手を一度通しているかどうかです。AIに頼りすぎることの落とし穴はChatGPTを使う前に知っておきたい7つの落とし穴、質問の具体例はチャットGPTでプログラミングの学習効率を上げる方法やChatGPT活用プログラミング学習法にまとめています。
「頭を使わない学習」は手抜きではない
「AIに聞いてばかりでは、自分で考える力がつかないのでは?」という心配はもっともです。筆者も、この問いには何度も向き合ってきました。
筆者の考えでは、初心者のうちに大事なのは「考え抜く力」よりも、疲れずに回数をこなすことです。脳に大きな負荷をかけ続けると、多くの人はそこで学習をやめてしまいます。エラーで1時間詰まるより、AIに原因を教えてもらって先へ進み、そのぶん復習の回数を増やすほうが、結果として早く書けるようになります。
脳科学には「神経効率仮説」と呼ばれる考え方があります。知能の高い人ほど、課題を解くときの脳の活動が少なくて済む傾向がある、というものです。研究をまとめたレビューでは、これを支持する研究が多い一方で、とても難しい課題では逆に脳をたくさん使うなど、結果はまちまちだとされています。それでも「慣れた人ほど、少ない負荷で処理できる」という方向は、プログラミングを教えている現場の実感とも合っています。上手な人ほど考え込まずに手が動くのは、考える力が強いからというより、繰り返しで処理が身体に染みついているからでしょう。
公文式も、かつては「それでは自分で考え抜く力がつかない」という批判を受けたことがあると、筆者は創始者の公文公氏の著書で知りました。書いているうちに法則に気づくという設計は、AIで回数をこなす学び方とよく似ています。
2025年以降に増えた「学習用モード」の使いどころ
生成AIのサービス側も、「答えを出しすぎない」学習向けの機能を用意し始めています。2026年10月時点で筆者が確認できたものを紹介します。
- ChatGPTの「study mode(学習モード)」:2025年7月に公開。答えをすぐ出すのではなく、質問やヒントで段階的に考えさせる家庭教師のような応答をします
- Claude Codeの「Learning」出力スタイル:Claudeが作業の大部分を進めつつ、設計の判断が必要な数行だけを「TODO(human)」として残し、学ぶ人に書かせます
- Google Colabの「エラーを説明(Explain error)」:コードの実行でエラーが出たときに、AIが原因と修正案を説明してくれます
ルール2の「答えを写さない」を、ツールの側で自然に守らせてくれるのが学習モードの良いところです。とくにClaude CodeのLearningスタイルは、「AIが大部分を書き、人間が要所だけ書く」という、これからの開発の形のまま練習できます。ただし、どのモードでも最後に「AIなしで解き直す」工程はツールがやってくれません。そこは自分で残しておく必要があります。
AIエージェントの時代でも、基礎を学ぶ意味はあるのか
2026年のいまは、Claude CodeのようなAIエージェントに頼めば、アプリ1本をほぼ丸ごと作ってもらえます。それでも基礎を学ぶ意味はある、というのが筆者の考えです。
理由は、AIが作ったものを読んで判断するのは人間だからです。AIは「AとBとCのどれにしますか?」と選択肢を出してきます。その意味がわからなければ、選ぶことも、間違いに気づくこともできません。筆者は、最低限の目安として、関数が書けて、クラスとインスタンスの考え方がわかるところまでは自分の手で書けるようにしておくことをすすめています。そこまでわかっていれば、AIが書いたコードの大半は読めますし、新しい言語や技術にもAIを使いながら追いつけます。
Claude Codeそのものの使い方を知りたい人はClaude Codeの解説記事から読んでみてください。
まとめ:AIで浮いた時間は「解き直し」に回す
- 生成AIで、調べる・直す・聞くの手間はほぼゼロになった
- テックジムは「デバッグをAIに任せるな」から「任せてよい、ただし自力で解き直す」にルールを変えた
- 15分で答えを見てよい。ただしコピーしない、書き写さない。見たら伏せて自分で書く
- スキルになるかどうかは、AIの出力を読む・書き直す・説明するのどれかを通したかで決まる
- ChatGPTの学習モードやClaude CodeのLearningスタイルも活用できるが、AIなしの解き直しは自分で残す
- AIエージェントの時代でも、関数とクラスまでは自分の手で書けるようにしておきたい
AIに作業を任せながら学ぶ感覚を体験してみたい人は、テックジムのClaude Code無料講座で試せます。
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参考情報
- MIT Technology Review「OpenAI is launching a version of ChatGPT for college students」(2025年7月29日)
- Claude Code Docs「Output styles」
- Google Cloud「Explain and fix errors with Gemini assistance」(Colab Enterprise)
- Neubauer and Fink, Intelligence and neural efficiency(Neuroscience and Biobehavioral Reviews, 2009)
- 子育てキャリアナビ:テックジムのChatGPT活用Python入門講座の体験記事(2024年9月)







