フランチャイズの成功率は公表されている?公的データの実態と加盟前に確認すべきこと

フランチャイズ加盟店の「成功率」を示す公的な統計はありません。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が毎年公表しているのはチェーン数・店舗数・売上高で、加盟店のうち何割が黒字か、何年続いたかという数字は含まれていないため、ネット上の「成功率○%」は出典を確かめてから扱うのが安全です。

成功の確率を知りたいなら、業界平均よりも「検討しているチェーンの既存店の実績」を本部から書面で受け取り、自分で収支を計算するのが確実な方法です。この記事では、公的データで分かること・分からないこと、加盟前に本部へ求められる情報、収支の見積もり方を順に解説します。

なお、旧版で紹介していた「業種別の成功事例20選」と「業種別成功率の表」は、実在を公式の発表や報道で確認できなかったため、すべて削除しました。

公的データで分かるフランチャイズ市場の実態

JFAは「フランチャイズチェーン統計調査」を年1回実施し、業種別のチェーン数・店舗数・売上高を公表しています(JFA フランチャイズチェーン統計調査)。2025年10月27日に発表された2024年度(2024年4月〜2025年3月)の結果は次のとおりです(2024年度JFAフランチャイズチェーン統計調査 報告)。

区分 チェーン数 店舗数 店舗数の前年比 売上高 売上高の前年比
総計 1,291 254,478 100.7% 29兆2,826億円 103.6%
小売業 307 109,670 101.7% 21兆5,598億円 103.4%
(うちコンビニ) 16 57,170 100.3% 12兆2,470億円 101.8%
外食業 547 51,865 100.7% 4兆6,291億円 106.9%
サービス業 437 92,943 99.4% 3兆937億円 101.0%

報告書の注記によると、店舗数は各チェーンの加盟店と直営店の合計、売上高は店舗の末端売上高です。

この統計から「成功率」が分からない理由

  • 店舗数は年度末時点の「残っている店」の数で、その年に開いた店と閉じた店の内訳は示されていない
  • 加盟店と直営店が合算されている
  • 売上高は店舗の売上で、オーナーの手元に残る利益ではない

つまり、市場全体が伸びているか縮んでいるかは分かっても、「加盟した人のうち何%がうまくいったか」は分かりません。サービス業は2024年度に店舗数が前年より535店減っており、業種によって動きが違うことは読み取れますが、それも個々の加盟店の成否を示すものではありません。

本部と加盟店のトラブルの相談件数

JFAは「フランチャイズ相談センター」で受けた相談の件数も公開しています。2025年度(2026年3月末現在)の相談件数は186件で、うち139件が本部と加盟店の間のトラブル、47件が加盟希望者の事前相談などでした。2026年3月の主な相談内容は「契約終了・更新・解除」「解約」などとされています(JFA フランチャイズ相談件数(2025年度))。これもJFAの窓口に寄せられた件数で、業界全体のトラブルの数ではない点に注意してください。

ネットの「成功率○%」をうのみにしない

「フランチャイズの成功率は○%」「○○業は成功率80%」といった数字は、出典が書かれていないか、本部や加盟募集サイトの独自集計であることが多く、次の点が確認できないまま使われがちです。

  • 「成功」の定義(黒字なのか、何年続いたのか、投資を回収できたのか)
  • 母数(全加盟店なのか、アンケートに答えた人だけなのか)
  • 集計した時期と、集計した主体

公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」は、本部が加盟希望者に予想売上げや予想収益を示す場合、類似した環境にある既存店舗の実績など根拠ある事実と合理的な算定方法に基づく必要があり、その根拠と算定方法を示す必要があるとしています。既存店舗の平均値などから作ったモデル収益を示す場合は、厳密な予想売上げではないことが加盟希望者に十分に理解されるようにする必要があるとも書かれています(公正取引委員会、令和3年4月28日改正版)。本部が示す数字についても、まず根拠を尋ねるのが基本です。

加盟前に本部から受け取れる情報

中小小売商業振興法の法定開示書面

中小小売商業振興法第11条は、加盟者に特定の商標などを使わせ、加盟金や保証金などを徴収する定めがある連鎖化事業(特定連鎖化事業)を行う本部に対し、契約を結ぶ前に次の事項を記載した書面を交付し、説明することを義務づけています(e-Gov法令検索 中小小売商業振興法)。

  1. 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
  2. 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
  3. 経営の指導に関する事項
  4. 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
  5. 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
  6. そのほか経済産業省令で定める事項

前述の公正取引委員会の考え方によれば、同法は対象となる本部に、周辺の人口や交通量などの立地条件が類似する店舗の直近3事業年度の収支に関する事項について、情報開示と説明の義務を課しています。「成功するかどうか」を考えるうえで、最も役に立つのはこの情報です。

本部に確認しておきたい項目

確認項目 確認する理由
類似立地の既存店の収支(直近3年) 自分の店の売上と利益を見積もる土台になる
加盟金・保証金・研修費などの初期費用 回収までの期間が決まる
ロイヤリティの方式(売上歩合・粗利分配・定額)と料率 同じ売上でも手残りが大きく変わる
契約期間、更新条件、中途解約の違約金 撤退するときの費用が決まる。JFAの相談でも多い論点
近くへの出店(ドミナント出店)の扱い 同じチェーンの店と顧客を取り合う可能性がある
仕入れ先の指定や営業時間の取り決め 原価と人件費に直結する

このほか、本部の紹介を通さずに既存の加盟店オーナーへ話を聞く、開示された収支の前提(人件費をオーナー自身の労働で補っていないか等)を確かめる、といった確認も役に立ちます。

自分で収支を見積もる方法

本部から受け取った数字をもとに、自分で損益分岐点を計算しておくと、楽観的な想定に気づきやすくなります。次のPythonコードは、すべて仮の数字(固定費月60万円、売上総利益率30%)で、ロイヤリティが「売上の5%」の場合と「定額月10万円」の場合を比べたものです。

# 仮の数字で、ロイヤリティ方式の違いが手残りに与える影響を比べる
fixed_costs = 600_000      # 家賃・人件費など毎月の固定費(円)
gross_margin = 0.30        # 売上総利益率(原価を引いた残りの割合)

def monthly_profit(sales, royalty_rate=0.0, royalty_fixed=0):
    gross = sales * gross_margin
    royalty = sales * royalty_rate + royalty_fixed
    return gross - royalty - fixed_costs

for sales in [2_000_000, 2_500_000, 3_000_000, 3_500_000]:
    a = monthly_profit(sales, royalty_rate=0.05)       # 売上の5%
    b = monthly_profit(sales, royalty_fixed=100_000)   # 定額10万円
    print(f"売上{sales:>10,}円  売上歩合: {a:>9,.0f}円  定額: {b:>9,.0f}円")

# 損益分岐点売上(利益がゼロになる売上)
be_rate = fixed_costs / (gross_margin - 0.05)
be_fixed = (fixed_costs + 100_000) / gross_margin
print(f"損益分岐点  売上歩合: {be_rate:,.0f}円  定額: {be_fixed:,.0f}円")

実行結果:

売上 2,000,000円  売上歩合:  -100,000円  定額:  -100,000円
売上 2,500,000円  売上歩合:    25,000円  定額:    50,000円
売上 3,000,000円  売上歩合:   150,000円  定額:   200,000円
売上 3,500,000円  売上歩合:   275,000円  定額:   350,000円
損益分岐点  売上歩合: 2,400,000円  定額: 2,333,333円

この例では、月の売上が240万円前後を下回ると赤字になり、売上が伸びるほど定額方式のほうが手残りが多くなります。ここでの「利益」はオーナー自身の報酬や税金を引く前の金額です。実際には、本部の開示資料にある既存店の数字を当てはめ、売上が想定の8割、7割になった場合も計算しておくと、資金がどれだけ持つかが見えてきます。

「成功事例」を読むときの注意点

加盟募集の広告や紹介記事には、オーナーの年収や月商を並べた成功事例がよく載っています。参考にする場合は、次の点を確かめてください。

  • 本部が自社サイトや報道発表で公表している事例か、出典が確認できるか
  • オーナーの年収なのか、店舗の売上なのか、どの数字かが明記されているか
  • 何年目の、どの立地の店か
  • 同じ時期にうまくいかなかった店がどれくらいあるか(成功例だけを並べていないか)

個人名と具体的な金額が並んでいても、出典がなければ事実かどうかは判断できません。成功事例は「その本部でこういう店もある」という一例であって、自分の店の見込みではありません。見込みは、前の章のとおり開示資料と自分の計算で立てます。

業種選びの考え方

初期費用、在庫の有無、人の採用の難しさ、オーナー自身がどこまで現場に立つかは業種によって大きく違います。比較の観点はフランチャイズビジネス徹底比較ガイド、立地の考え方はフランチャイズのエリア選び・立地選定、契約前の注意点はフランチャイズ加盟で失敗しないための注意点15選にまとめています。

教育業の一例として、この記事を運営するテックジムもプログラミングスクールのフランチャイズ校を募集しており、運営の考え方をテックジムFC講座で説明しています。利害関係のある本部の情報なので、他社との比較材料の一つとしてご覧ください。同業の条件はプログラミングスクールのフランチャイズ20社比較で並べています。

よくある質問

Q. フランチャイズの成功率は何%ですか?

公的な統計で示された成功率はありません。日本フランチャイズチェーン協会の統計はチェーン数・店舗数・売上高を公表するもので、加盟店のうち何割が黒字か、何年続いたかは含まれていません。検討しているチェーンの既存店の収支を本部から受け取り、自分で見積もるのが確実です。

Q. フランチャイズの市場規模はどれくらいですか?

日本フランチャイズチェーン協会の2024年度調査では、チェーン数1,291、店舗数25万4,478店、売上高29兆2,826億円で、いずれも前年度より増えました。店舗数は加盟店と直営店の合計です。

Q. 加盟前に本部からどんな情報をもらえますか?

中小小売商業振興法の対象となる本部は、契約前に加盟金などの金銭、商品の販売条件、経営指導、商標、契約期間・更新・解除などを記載した書面を交付して説明する義務があります。類似立地の店舗の直近3事業年度の収支についても開示と説明の義務があります。

Q. 本部が示す売上予測は信用してよいですか?

公正取引委員会は、本部が予想売上げや予想収益を示す場合には既存店舗の実績など根拠ある事実と合理的な算定方法に基づく必要があり、その根拠を示す必要があるとしています。数字を受け取ったら、根拠となった店舗の条件と計算方法を必ず確認してください。

まとめ

  • フランチャイズの「成功率」を示す公的な統計はなく、ネットの数字は定義と出典の確認が必要
  • JFAの2024年度統計では、チェーン数1,291、店舗数約25万店、売上高約29兆円で、いずれも前年度より増加
  • JFAへの2025年度の相談は186件で、本部と加盟店のトラブルは契約終了・解除・解約に関するものが目立つ
  • 中小小売商業振興法の法定開示書面と、類似立地の既存店の直近3年の収支を必ず受け取る
  • 成功事例ではなく、開示資料をもとにした自分の損益分岐点計算で判断する

本部とのトラブルの実例と対策はFC版タイガーファンディング炎上事例まとめ、デジタル化の動きはDXでフランチャイズが変わるでも解説しています。

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