防衛テック企業が防衛省・防衛装備庁の調達や入札に参加するには?「ファストパス調達」を徹底解説


防衛テック企業は防衛省の調達に参加できるのか?

AI、ドローン、無人機、衛星、サイバーセキュリティ、量子技術などを手掛ける防衛テック企業・スタートアップにとって、日本の防衛市場は大きな成長市場になりつつあります。

一方で、

  • 防衛省の入札は大企業しか参加できないのでは?

  • スタートアップでも防衛装備庁と契約できるのか?

  • 防衛省の入札参加資格はどう取得するのか?

  • 実績のない企業でも防衛市場に参入できるのか?

  • 最近話題の「ファストパス調達」とは何なのか?

と疑問を持つ企業も少なくありません。

結論からいうと、スタートアップや中小企業にも防衛産業への参入ルートは用意されています。

防衛装備庁は現在、「防衛産業への参入促進」の一環として、新規参入相談窓口、ファストパス調達、防衛産業参入促進展、スタートアップ技術提案評価方式などを整備しています。 (防衛省)

特に2026年度からは、スタートアップなどの技術をより迅速に防衛装備へ取り込む**「ファストパス調達」**が重要なキーワードになっています。


「ファストパス調達」とは?

ファストパス調達とは、防衛装備庁が進めている、従来よりも迅速に研究開発・装備化につなげるための調達の仕組みです。

防衛装備庁は、スタートアップ企業などが持つ優れた技術を早期に防衛装備品へ取り込むことを目的として、この仕組みを推進しています。 (防衛省)

2026年度については、防衛装備庁がファストパス調達などを推進するため、約70億円の予算を確保する方向とされました。

さらに、その先には、

  • 約70億円:スタートアップ等の活用

  • 約7,100億円:本格的な研究開発

  • 約8.3兆円:量産・調達

という大きな市場への接続が想定されています。 (防衛省)

つまりファストパス調達は、単に「入札を簡単にする制度」というより、

スタートアップの技術を「萌芽→研究開発→量産・調達」へ早くつなげるための入口

と考えると分かりやすいでしょう。


防衛省・防衛装備庁の調達に参加する基本ルート

通常の防衛省調達に参加する場合、基本的には次の流れになります。

STEP1:防衛省の競争参加資格を取得

防衛省のFAQでは、物品・役務について、

  1. 統一資格を取得

  2. 防衛省・地方防衛局・部隊などの公告を探す

  3. 公告に記載された参加資格を確認

  4. 入札に参加

という流れが示されています。 (防衛省)

防衛装備品についても基本的な流れは同じですが、案件によって追加の資格要件などが設定される場合があります。 (防衛省)


STEP2:全省庁統一資格を取得する

防衛省の一般競争入札では、案件によって、

  • 物品の製造

  • 物品の販売

  • 役務の提供等

などの競争参加資格が求められます。

実際の防衛装備庁の公示でも、「令和7・8・9年度防衛省競争参加資格(全省庁統一資格)」を要件としている案件があります。 (防衛省)

防衛省は競争参加資格の申請・変更について専用ページを設けており、申請に関する問い合わせは本社所在地を管轄する地方防衛局などで受け付けています。 (防衛省)

したがって、防衛市場に継続的に参入したいスタートアップは、早い段階で統一資格の取得を検討することが重要です。


STEP3:防衛装備庁の入札・公募情報を探す

資格を取得したら、実際の案件を探します。

防衛装備庁では、

  • 一般競争入札

  • WTO政府調達

  • 公募

  • 特定の随意契約における常続的公示

  • 調達予定

などの情報が公開されています。 (防衛省)

また、防衛装備庁には公募等に関する公示ページもあり、契約希望者を募集している案件を確認できます。 (防衛省)

防衛テック企業にとって重要なのは、「入札公告が出てから探す」のではなく、調達予定や防衛省のニーズを継続的にチェックすることです。


STEP4:防衛装備品等調達システムを利用する

防衛装備庁では、中央調達について「防衛装備品等調達システム(DEPS)」を運用しています。

このシステムでは、

  • 電子入札

  • 電子契約

  • 代金請求

  • 各種申請

などの手続きをオンラインで行えます。 (防衛省)

初めて利用する企業には、

  1. 環境設定

  2. 電子証明書の取得

  3. ICカードリーダライタ等の準備

  4. 利用者申請・登録

などの準備が必要です。 (防衛省)

したがって、防衛市場への参入を考えるスタートアップは、「資格取得」と「電子調達環境の整備」を別々の準備として進めるとよいでしょう。


しかし、スタートアップが「普通の入札」だけを狙う必要はない

ここが防衛テック企業にとって非常に重要なポイントです。

スタートアップの場合、

「統一資格を取得して、既存の入札案件に参加する」

だけが防衛省への入り口ではありません。

防衛装備庁は、新規参入企業向けに複数のルートを用意しています。

代表的なのが、

  • 新規参入相談窓口

  • ファストパス調達

  • スタートアップ技術提案評価方式

  • 防衛産業参入促進展

です。 (防衛省)


防衛装備庁の「新規参入相談窓口」を活用する

防衛装備庁は、防衛産業への新規参入を希望する企業向けに相談窓口を設置しています。

対象となるのは、例えば、

  • 新規性のある技術

  • 優れた技術

  • 優れた製品

  • 価格競争力のある製品

などを持つ企業です。 (防衛省)

さらに、技術・製品を提案したい企業は、提案書をメールで提出することもできます。

提案書には、

  • 企業名

  • 事業概要

  • 提案する技術・製品

  • 防衛装備品に関する取引実績

  • 主要顧客

  • 販売実績

  • 担当者情報

などを記載します。 (防衛省)

つまり、「自社技術を防衛用途に使えないか」という段階から防衛装備庁に相談することも可能です。


「スタートアップ技術提案評価方式」とは?

もう一つ注目すべき制度が、スタートアップ技術提案評価方式です。

これは、高度かつ独自の新技術を持つスタートアップなどとの随意契約を活用する仕組みです。

防衛装備庁は、2024年6月に各府省庁等で申し合わされた「高度かつ独自の新技術を有するスタートアップ等との随意契約(スタートアップ技術提案評価方式)の運用ガイドライン」に基づき、この仕組みを活用しています。 (防衛省)

実際に2026年には、

「マルチスタティックソーナー技術概念実証(USV)」

など、この方式を適用した契約結果も公表されています。 (防衛省)


ファストパス調達とスタートアップ随契は何が違う?

ここは混同しやすいポイントです。

項目 ファストパス調達 スタートアップ技術提案評価方式
主な目的 研究開発・装備化の迅速化 独自技術を持つスタートアップとの契約
対象 スタートアップ等 高度かつ独自の新技術を持つSU等
特徴 複数の調達手法を活用 随意契約を活用
狙い 技術を早期に防衛装備へ 新技術を迅速に契約へ
位置付け より大きな「迅速化」の取り組み 具体的な契約手法の一つ

防衛装備庁の資料では、ファストパス調達を実現する手法の一つとして、スタートアップ技術提案評価方式が位置付けられています。 (防衛省)


「公募→契約」が約3カ月半という可能性も

従来型の随意契約では、企業選定、予算要求、唯一性の証明などが必要となり、契約締結まで最低1年以上かかるイメージが示されています。

これに対してスタートアップ随契では、

行政課題の設定

スタートアップ等から技術提案を公募

技術提案を審査

内閣府の確認

契約相手を決定

企業と仕様書を協議

随意契約

という流れが想定され、資料では公募から契約締結まで約3カ月半というイメージが示されています。 (防衛省)

これは、防衛テック企業にとって非常に重要な変化です。


どんな防衛テック企業にチャンスがあるのか?

2026年度のファストパス調達で想定されているスタートアップの技術分野には、

  • AI

  • 無人機

  • 量子

  • バイオ・メディカル

  • 宇宙

  • 教育・訓練

などがあります。 (防衛省)

つまり「兵器メーカー」である必要はありません。

例えば、

AI

画像認識、映像解析、意思決定支援、生成AIなど。

ドローン・無人機

偵察、監視、物流、海洋監視など。

宇宙

衛星、衛星データ解析、宇宙状況把握など。

サイバー

サイバー防御、脅威検知、ネットワーク監視など。

量子

量子センシング、量子通信、量子コンピューティングなど。

こうした民生分野の技術を防衛用途に転用するデュアルユース技術が、防衛テック市場では重要になります。


防衛テック企業が最初に準備すべき5項目

防衛省への参入を考えるスタートアップは、次の5項目を準備しておくとよいでしょう。

1.自社技術を「防衛用途」に翻訳する

単に、

「AI技術があります」

では弱いでしょう。

例えば、

「AIによる画像認識技術を活用して、無人機から取得した映像から特定対象を自動検出できます」

というように、

技術 → 防衛上の課題 → 解決方法

まで整理することが重要です。


2.実証データを用意する

防衛市場では「面白い技術」だけではなく、

  • 精度

  • 耐環境性

  • 稼働時間

  • 通信距離

  • 処理速度

  • 誤検知率

  • セキュリティ

  • コスト

など、具体的な性能を説明できることが重要です。


3.企業としての供給能力を示す

防衛装備品は、実証に成功すれば終わりではありません。

量産・保守・アップデートまで考える必要があります。

そのため、

「技術はあるが製造できない」

という状態では、量産段階で問題になる可能性があります。


4.防衛省・自衛隊のニーズを把握する

防衛装備庁は新規参入相談窓口を設けており、企業からの技術・製品提案を受け付けています。 (防衛省)

また、防衛産業参入促進展など、防衛省・自衛隊や防衛関連企業とのマッチング機会も設けられています。 (防衛省)

スタートアップにとっては、「売り込む」だけではなく、「防衛側が何を必要としているのか」を理解することが重要です。


5.情報セキュリティへの対応を早める

防衛産業への参入では、技術力だけでなく情報セキュリティも重要です。

防衛装備庁では防衛産業保全に関する制度整備を進めており、「防衛事業適合事業者制度」については令和10年度に完全移行する予定とされています。 (防衛省)

そのため、防衛市場を本格的に狙う企業は、

「契約を取ってからセキュリティ対応」

ではなく、

「参入準備の段階からセキュリティ対応」

を考える必要があります。


防衛テック企業のおすすめ参入戦略

防衛市場への参入を目指すスタートアップなら、次のようなルートが現実的です。

ルートA:通常入札

統一資格取得

公告を探す

案件の参加資格を確認

入札

契約

既に市場に存在する製品・サービスを販売する場合に向いています。


ルートB:新規参入相談

自社技術を整理

防衛装備庁へ提案

担当部署との相談

実証・研究開発等につなげる

まだ具体的な入札案件が存在しない技術に向いています。


ルートC:スタートアップ技術提案評価方式

行政課題

技術提案

審査

契約

実証・研究開発

独自性の高い技術を持つスタートアップにとって重要なルートです。


ルートD:ファストパス調達

スタートアップの技術

迅速な研究開発・実証

装備化

量産・本格調達

今後、防衛テック企業が特に注目すべきルートです。


防衛テック企業にとって「ファストパス」は大きなチャンス

これまでの日本の防衛産業は、長年にわたって大手企業を中心とした産業構造になっていました。

しかし、AIやドローン、宇宙、サイバー、量子などの技術革新が急速に進む現在、すべてを従来型の防衛企業だけで開発することは難しくなっています。

そこで重要になるのが、民間のスタートアップが持つ技術を防衛分野に取り込むことです。

防衛省も、スタートアップ企業等の技術を迅速に導入するための柔軟な契約制度の活用を進めています。 (防衛省)

2026年度には約70億円の予算を確保する方向が示されており、そこから本格的な研究開発、さらに量産・調達へとつなげる構想です。 (防衛省)


「入札に参加する」だけではなく「防衛省に技術を提案する」

防衛テック企業が理解しておきたいのは、

防衛省市場=入札公告を探して入札する市場

ではなくなりつつあるということです。

特にスタートアップの場合、

「自社にはこの技術があります」

から始めて、

「この技術によって、この防衛上の課題を解決できます」

という提案を行うことが重要になります。

防衛装備庁自身も、新規性のある技術・製品を持つ企業からの提案を受け付けています。 (防衛省)


まとめ:防衛テック企業は「ファストパス調達」を見逃すな

防衛省・防衛装備庁への参入方法をまとめると、次のようになります。

参入方法 特徴 向いている企業
一般競争入札 通常の政府調達 既存製品・サービスを持つ企業
公募 特定テーマに対して提案 技術・製品を持つ企業
新規参入相談 防衛装備庁へ直接相談・提案 防衛市場未経験の企業
スタートアップ技術提案評価方式 独自技術を活用した随意契約 高度・独自技術を持つSU
ファストパス調達 研究開発から装備化までを迅速化 AI・ドローン・宇宙等の防衛テック

そして、2026年以降の防衛テック市場で特に注目したいのが**「ファストパス調達」**です。

防衛装備庁は、スタートアップ等の優れた技術を早期に防衛装備へ取り込むため、この仕組みを推進しています。 (防衛省)

防衛テック企業にとって重要なのは、単に「防衛省の入札資格を取る」ことではありません。

①統一資格を取得する
②防衛装備庁の調達・公募情報を継続的に確認する
③新規参入相談窓口を活用する
④自社技術を防衛ニーズに合わせて提案する
⑤ファストパス調達やスタートアップ技術提案評価方式を活用する
⑥将来的な研究開発・量産まで見据える

という複数のルートを同時に準備することが、防衛市場参入への近道になります。

なお、ファストパス調達は「入札参加資格を不要にする制度」という意味ではありません。通常の競争入札とは異なる迅速な調達・研究開発の仕組みを含むため、個別案件の公募条件や契約方式を確認することが重要です。 (防衛省)


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