「ハエの脳」がゲームを遊ぶ?awesome-flyのブラウザゲーム4本を実際に遊んでみた

「Help the Fly Escape」の3Dの家。放したハエの群れが部屋に集まっている

ハエの脳の配線をそのまま使ってゲームを動かすと、どうなるのか。そんな実験が、いま海外の開発者のあいだで次々に公開されています。Dinoを走らせるハエ、ハエたたきから逃げるハエ、ブラックジャックを覚えていくハエ。どれも、実際に計測されたショウジョウバエの神経回路のデータを土台にしたものです。

こうした作品を集めたリストが、GitHubで公開されている「awesome-fly」です。この記事では、awesome-flyとは何かを整理したうえで、リストに載っているブラウザで遊べるゲームを実際に遊んでみた結果を、画面つきで紹介します。

「awesome-fly」とは?

名前 Awesome Fly
公開場所 GitHub(cobanov/awesome-fly)
作成者 Mert Cobanov(cobanov)。リストに載っている「Fly Dino」の作者でもある
公開日 2026年9月12日
中身 ショウジョウバエの「コネクトーム」を使ったプロジェクトのリンク集。ゲーム、デスクトップで動くハエ、脳のモデル、データセット、解析ツール、論文など約100件
ライセンス リスト自体はCC0 1.0。リンク先の作品はそれぞれのライセンスに従う
料金 無料(ブラウザで遊べる作品もある)

awesome-flyは、それ自体がゲームではありません。GitHubでよく見かける「awesome-○○」という形式のまとめリストで、ショウジョウバエの神経回路のデータを使った作品を、ジャンルごとに紹介しています。

ゲームだけでも、DOOMやスーパーマリオ64、マインクラフト、フラッピーバード、ポン、チェス、三目並べなどを「ハエの脳」に遊ばせる実験が20件並んでいます。そのうちいくつかは、ブラウザを開くだけで遊べる「Play」リンクが付いています。

そもそも「コネクトーム」とは

コネクトームとは、脳の神経細胞(ニューロン)が、どれとどれにつながっているかをすべて書き出した「配線図」のことです。ショウジョウバエは、この配線図がほぼ丸ごと解読された動物のひとつで、awesome-flyに載っている作品の多くは、次の2つのデータを使っています。

データ 内容
MaleCNS オスのショウジョウバエの中枢神経系(脳と、背骨にあたる腹側神経索)の配線図。リストによると、v1.0の公開日は2026年6月8日、論文(Cell誌)は2026年9月3日
FlyWire(FAFB) メスのショウジョウバエの脳の配線図。MaleCNSとは別のデータ

ゲームを動かすには、この配線図に「ニューロンがどう反応するか」「目から何が入り、どの信号でジャンプするか」といった仮定を足して、シミュレーションにする必要があります。人工知能で使われるニューラルネットワークの考え方とも近いので、仕組みが気になる人は「ニューラルネットワークとは?ニューロン・重み・誤差逆伝播法の仕組みをPythonで解説」も読んでみてください。

リストが強調している注意点

awesome-flyの冒頭には、はっきりとこう書かれています。ハエが動いて見えたり、ゲームを遊べたりしても、それだけで本物のハエの脳を再現したことにはならない。

実際、多くの作品は「脳の一部の回路だけを使っている(Circuit subset)」「入力と出力のつなぎ方は作者が考えたもの」「学習させているのは出口の部分だけ」といった条件付きです。リストはそれぞれの作品に、こうした限界を正直に書き添えています。この記事で紹介するゲームも、「本物のハエの配線を使った、よくできた実験」として楽しむのがちょうどいい距離感です。

awesome-flyの使い方

awesome-flyはリンク集なので、インストールは不要です。

  1. GitHubで「cobanov/awesome-fly」を開く
  2. 「Games and control experiments(ゲームと操作の実験)」の項目を見る
  3. 説明の最後に「Play」や「Demo」のリンクがある作品は、クリックするだけでブラウザで遊べる
  4. リンクがない作品は、GitHubからダウンロードして自分のパソコンで動かすタイプ(Pythonや専用の環境が必要なものが多い)

説明文はすべて英語ですが、ブラウザの翻訳機能を使えば十分に読めます。今回は、パソコンのブラウザで遊べる次の4作品を試しました。

作品 どんなゲーム? 使っている回路
Fly Dino Chromeの恐竜ゲームをハエの回路が遊ぶ 80ニューロン
Swat ハエたたきで、逃げるハエを捕まえる 6,000ニューロン
Help the Fly Escape 家に物を置いて、ハエを外へ逃がす 選んだ一部の回路
The Fly’s Table ハエとブラックジャックで勝負する キノコ体(記憶に関わる部分)

実際に遊んでみた

ここからは、4つのゲームを実際に動かしてみた結果です。画面はすべて筆者がパソコンのブラウザで撮影しました。

Fly Dino:ハエの80ニューロンが恐竜をジャンプさせる

Fly Dinoでハエの80ニューロン回路の学習済みエージェントがDinoを走らせている画面。スコア391

最初は、awesome-flyの作者自身が作ったFly Dinoです。インターネットが切れたときにChromeに出てくる、あの恐竜のゲームを、ハエの回路に遊ばせます。

画面には、左上にゲーム、右上に「どの行動を選んだか」の判断の流れ、下にハエの体の3Dモデルと、脳のどこが動いているかが表示されます。画面の説明によると、使っているのは80個のニューロンと、実際に計測された1,296本のつながり。学習させているのは、回路の出口にある243個の数値だけで、ハエの配線そのものは変えていません。

ページを開くと、学習済みのハエ(第32世代)が自動で走り始めます。見ていると、サボテンの手前でちゃんとジャンプし、ときどきしゃがむ動きも選びます。今回はスコア391まで、ジャンプ30回・しゃがみ7回で走り切りました。判断の画面では「RUN(走る)」「JUMP(跳ぶ)」「DUCK(しゃがむ)」の点数が毎回計算され、いちばん高いものが選ばれていく様子がリアルタイムで見られます。

Fly Dinoを手動操作に切り替えてスコア41でゲームオーバーになった画面

操作を「Manual(手動)」に切り替えると、人間もスペースキーで遊べます。試しにやってみたところ、スコア41でゲームオーバー。ハエの回路に大差で負けました。

ページの下では、ハエの回路を一から学習させ直すこともできます。1世代で64通りを試し、成績のよい8通りを残す、というやり方を繰り返して賢くしていく方法で、スコアがどう伸びていくかがグラフで見られます。

Swat:13回振って、9.5秒でハエを捕まえた

Swatでハエたたきを構えてハエを追いかけている画面。右側にハエの神経回路が光っている

Swatは、画面の中を飛び回るハエを、30秒以内にハエたたきで捕まえるゲームです。操作はマウスで狙ってクリックするだけ。ただし、クリックしてから実際にハエたたきが当たるまで約0.24秒(240ミリ秒)かかるので、ハエが動く先を読んで振る必要があります。

右側の「Tiny mind.」の欄には、6,000個のニューロンと128万本のつながりを持つハエの回路が表示されています。ハエたたきを近づけると、視覚にあたるニューロンが光り、逃げる回路が動き出すのが見えます。つまり、ハエは「見て」逃げているわけです。画面の下には「Real circuit. Arcade flight.(回路は本物、飛び方はゲーム用)」と書かれていて、正直な作りになっています。

Swatで9.5秒、13回目のスイングでハエを捕まえた「Gotcha!」の画面

1回目は、9.5秒、13回目のスイングでついに「Gotcha!(捕まえた!)」。空振りは12回でした。ハエのすぐ上を狙うと、ぎりぎりでかわされます。続けて「Rematch」でもう一度挑戦しましたが、2回目は5回振って5回とも空振り。現実のハエと同じで、なかなか思いどおりには捕まりません。

Help the Fly Escape:家に物を置いて、ハエを外へ逃がす

Help the Fly Escapeで家の中にバナナと酢を置いた配置画面

Help the Fly Escapeは、3Dの家の中に物を置いて、ハエを窓の外へ誘導するパズルゲームです。置ける物は、リンゴ・バナナ・酢(各3個)、扇風機(1台)、汚れた食器(3個)。ハエが好きなにおいで道を作り、出口まで連れていくイメージです。

今回は、スタート地点の近くにバナナを、窓へ向かう途中に酢を置いて、「Release the flies(ハエを放す)」を押しました。放たれたハエは16匹。制限時間は10分で、画面右には「逃げた」「捕まった」などの数が表示されます。冒頭の画像は、放したハエの群れが部屋に集まった瞬間です。

ただ、今回の環境では、ハエを放したあと画面が「One moment…(少々お待ちください)」のまま進まず、ハエが外へ逃げるところまでは見られませんでした。この作品は、ハエの回路の計算をブラウザ内で動かす作りになっているため、パソコンの性能やブラウザによっては時間がかかる可能性があります。遊ぶときは、性能に余裕のあるパソコンで試してみてください。

The Fly’s Table:ハエとブラックジャックで勝負する

The Fly's Tableの画面。ハエの3Dモデルとキノコ体の神経細胞の活動表示

The Fly’s Tableは、ハエと1対1でブラックジャックをするゲームです。面白いのは、ハエが対戦しながら学習していくところ。ハエの「キノコ体」と呼ばれる、においの記憶に関わる部分の回路を使っていて、勝ち負けに応じてドーパミンの信号がつながりの強さを変えていきます。

しかも、ハエの脳は世界中のプレイヤーで共有されています。席はひとつだけで、順番待ちの列があり、ほかの人の対戦を観戦することもできます。今回は、ほかの人が対戦している台だったので、着席はせずに観戦しました。画面には、これまでの対戦数30,636回、ハエの勝率マイナス18.0%、基本戦略との一致率50%と表示されていました。

作者のREADMEによると、ひとりで3万回対戦させると、ハエの成績はマイナス45%からマイナス16%まで上がったとのこと。ドーパミンの信号を切ると、この伸びはなくなったそうです。つまり、「学習している」ことを、回路を切る実験で確かめているわけです。

遊んでみて感じたこと

  • 「脳の中が見える」のが新鮮:どの作品も、ゲームの横でハエのニューロンが光る様子が見られます。ゲームの上手さより、「いまどこが動いたか」を見るのが楽しいタイプです
  • ブラウザだけで試せる:研究用のデータを使っているのに、インストールなしで遊べる作品があるのは驚きでした
  • 限界を正直に書いている:「回路は本物、飛び方はゲーム用」「学習しているのは出口だけ」など、どこまでが本物かが明記されていて、誇大な表現がありません
  • 重い作品もある:3Dでたくさんのハエを動かす作品は、環境によっては進まないことがありました

ほかにもある、ハエの脳を使った作品

awesome-flyには、ブラウザで遊べるもの以外にも、ユニークな作品が並んでいます。一部を紹介します。

作品 内容
Doomfly ハエの回路にDOOMを遊ばせる実験。「生き残ることを学習できた」とはまだ言えない、という否定的な結果も公開している
Fly64 ハエの回路でスーパーマリオ64を動かす
Fly Brain Minecraft マインクラフトのハエ1匹1匹が、ハエの回路で動くMod
fly-flappy フラッピーバードを、MaleCNSの回路まるごとで遊ぶ実験
Fly Chess Lab ハエの回路でチェスを指す実験(ブラウザのデモあり)
FLYFEAR ハエの回路が関わるホラーゲームの試作品(ブラウザで遊べる)
DesktopFly Macのデスクトップの上を、ハエが歩き回る
Infinite Sugar 甘いものを感じ続けるハエを眺める、ブラウザのアート作品

ゲームのほかにも、株価のチャートを見せる実験や、音楽を作る実験、ファッションの柄を決める実験まであります。研究者向けには、MaleCNSやFlyWireのデータそのものや、Pythonで配線図を解析するためのライブラリもまとめられています。

自分でもゲームやAIを作ってみたくなったら

awesome-flyの作品の多くは、JavaScriptやPython、Rustなどで作られ、ソースコードもGitHubで公開されています。「ハエの回路に入力を入れて、出てきた信号でジャンプさせる」という発想は、AIがゲームを学ぶ強化学習の考え方にもつながっています。

ゲーム作りの始め方は「ゲーム開発のやり方|個人で始める手順と勉強方法」、Pythonでのゲーム作りは「Pythonでゲーム開発。初心者でも作れるゲームとおすすめライブラリを解説」で解説しています。GitHubのゲームをダウンロードして遊ぶ手順は「もやもや漢字をふきとばせ!「やる気Survivors」をダウンロードから遊んでみた」も参考にしてください。

ブラウザですぐ遊べるゲームを、AIと一緒に作る

今回のゲームのように、ブラウザを開くだけで遊べるゲームは、いまやAIと一緒に作れる時代です。テックジムのAI駆動開発/生成AIエンジニアコースでは、受講生がプロンプトだけで作ったゲームを公開しています。スペースインベーダーやモグラ叩きなど、実際に遊べる作品が並んでいるので、のぞいてみてください。

テックジムでは、未経験から参加できる無料のプログラミング講座も開いています。「遊ぶ側」から「作る側」へ、一歩踏み出してみませんか。

よくある質問(FAQ)

Q. awesome-flyはゲームですか?

ゲームではなく、ショウジョウバエの神経回路のデータを使った作品を集めたリンク集です。リストの中に、ブラウザで遊べるゲームがいくつか含まれています。

Q. 無料で遊べますか?

今回紹介したFly Dino、Swat、Help the Fly Escape、The Fly’s Tableは、どれもブラウザで無料で遊べました。

Q. スマホでも遊べますか?

Swatはスマホのタッチ操作にも対応していると画面に説明がありました。ほかの作品はパソコンの画面を前提にした作りなので、パソコンで遊ぶのがおすすめです。

Q. 本物のハエの脳がゲームをしているのですか?

実際に計測されたハエの神経回路の「配線」を使っていますが、ニューロンの反応のしかたや、入力と出力のつなぎ方は作者が作ったものです。awesome-flyも、ゲームが動くことは本物の脳の再現を意味しない、と注意書きしています。

Q. 英語が分からなくても楽しめますか?

ゲームの操作はシンプルなので、英語が分からなくても遊べます。説明を読みたいときは、ブラウザの翻訳機能を使うと便利です。

関連記事

近いテーマの記事です。あわせてどうぞ。


参考情報

本記事は2026年9月30日時点の内容をもとに作成しています。ゲーム画面の画像は、筆者が実際にブラウザで動かした画面を撮影したものです。各作品は試作・研究段階のものが多く、内容や公開状況が変わる場合があります。

対面・無料|東京・永田町で毎週土曜日13時

1回の参加で、プログラミングの構造がわかる

ゼロからはじめるPython入門講座

8年間・累計600回開催/これまで全国で2万人以上が参加

「やはり対面で聞けるのはとても気づきがあり、価値があると思います」

参加者の声

  • 本当に初心者からの講座です。プログラミングに触ったことがなくて大丈夫です
  • 対面だから、その場で聞けます。つまずいた所を持ち帰らずに解決できます
  • 講座は1時間。そのあとも残って学習を続けられ、講師にも質問できます
  • 独学で挫折した方も。糸口が見つかって、講座のあと会員になる方が多くいます

無料で参加する|開催日程を見る

参加費は無料です