プログラミングは「暗記は不要、経験は必要」|1行の便利なコードより“素手で書けるコード”が大事な理由

プログラミング学習では、「暗記」をしてはいけません!
プログラミングがほかの学習分野と決定的に違うのは、「プログラムを実行して検証できる」ことです。書いたコードが正しいかどうかは、覚えているかどうかではなく、動かしてみれば分かります。
また、実際の開発現場では、サンプルコードがあったり、その都度調べたりできるので、そもそも「覚える」必要がありません。
この記事では、1行で書ける「便利なコード」と、基本の文法だけで書いた「素手のコード」を比べながら、なぜプログラミングに暗記がいらないのか、そのかわりに何が必要なのかをお話しします。
暗記が不要な理由の全体像はプログラミングに暗記は不要!効率的な学習法と実践のコツにまとめています。
関数の意味は「覚える」より「動かせば分かる」
たとえば、Pythonの random.randint(a, b) は「aからbの間の整数をランダムに返す」関数です。でも、これを暗記する必要はありません。
import random
print(random.randint(1, 6)) # 1〜6のどれかが表示される
何回か実行してみれば、1から6の数字がランダムに出てくることはすぐに分かります。分からなくなったら、また動かすか、調べればいいのです。使い方の詳細は「Python random.randint()とは?範囲指定で整数の乱数を作る」にまとめています。
1行で書ける「便利なコード」
次のコードも見てみましょう。
hands = ['グー', 'チョキ', 'パー']
text = ", ".join(f"{i}:{hand}" for i, hand in enumerate(hands))
print(text)
実行すると、こう表示されます。
0:グー, 1:チョキ, 2:パー
enumerate 関数と join 関数を使えば、番号付きの一覧を1行で作れます。たしかに便利です。
でも、みなさん、ちょっと考えてみてください。
「薔薇」や「憂鬱」は書けなくてもいい
「薔薇」とか「憂鬱」とか、手で書けますか?
むしろ、書けなくてもいいですよね。読むことさえできれば、日常生活で書ける必要はありません。書けたら、周りの人が「すごいね」と言ってくれるかもしれませんが、それだけです。
プログラミングの世界でも同じです。enumerate や join を組み合わせた1行をすらすら書けたら、「すごい」と言ってくれる人はいるかもしれません。でもそれは、あなたの自慢に付き合ってくれているだけ。本音のところは「どうでもいい」のです。
教える側が「暗記させる」紹介をしてしまう
ところが、プログラミング教育の現場では、こういうことがよく起きています。
組み込み関数(基本関数)を、まるで暗記させるかのように次々と紹介してしまうのです。紹介された側は、読んでもすぐには覚えられないので、なんとか覚えようとしてしまいます。
こういうときは、「こういう関数が用意されているんだな」と知っておくだけで十分です。いざ使う場面が来たら、そのとき調べ直せばいいのです。enumerate なら「Python enumerate()とは?」、join なら「Pythonのjoin()とは?」を、必要になったときに開けば足ります。
同じ処理を「素手」で書いてみる
では、先ほどの1行のコードを、enumerate も join も使わず、基本の文法だけで書いてみましょう。
hands = ['グー', 'チョキ', 'パー']
text = ''
i = 0
for hand in hands:
text += str(i) + ':' + hand
if i < 2:
text += ', '
i += 1
print(text)
実行結果は、1行版とまったく同じです。
0:グー, 1:チョキ, 2:パー
たしかに6行増えました。でも、このコードを何も見ずに書けることのほうが、ずっと大事です。
このコードを書くには、次のことが分かっていないといけません。
- for文:リストの中身を1つずつ取り出して、同じ処理を繰り返す(「Pythonのfor文の使い方」)
- インクリメント:
i += 1で、番号を1つずつ増やしていく - 文字列の連結:数値の
iはstr(i)で文字列にしてからつなぐ - if文の差し込み:最後の要素のあとにはカンマを付けないよう、繰り返しの途中に条件分岐のブロックを入れる(「Pythonのif文とは?」)
特に最後の、繰り返しのブロックの途中にif文のブロックを差し込むという構造は、関数の名前をいくら覚えても身につきません。自分の手で組み立てた経験があるから書ける技術です。
「書いて、エラーして、直して」で体得する
この技術は、暗記ではなく「実際に書いて、エラーして、直して」の繰り返しで身につきます。たとえば、こんな経験をするはずです。
経験1:str() を付け忘れてエラーになる
str(i) ではなく、うっかり i のまま文字列とつなごうとすると、こんなエラーが出ます。
text += i + ':' + hand
TypeError: unsupported operand type(s) for +: 'int' and 'str'
「数値と文字列は、そのままでは + でつなげないんだ」。一度このエラーに出会って直した人は、次から自然に str() を付けるようになります。このエラーの意味は「TypeError: unsupported operand type(s) for +: ‘int’ and ‘str’ の原因と解決方法」で解説しています。
経験2:手を増やしたら表示が崩れる
じゃんけんの手に「キツネ」を足してみましょう。
hands = ['グー', 'チョキ', 'パー', 'キツネ']
さっきのコードのまま実行すると、こうなります。
0:グー, 1:チョキ, 2:パー3:キツネ
「パー」と「キツネ」の間のカンマが消えてしまいました。原因は if i < 2: の「2」を、手が3つのときの数字のまま決め打ちしていたことです。手の数に合わせて変わるように直します。
if i < len(hands) - 1:
text += ', '
0:グー, 1:チョキ, 2:パー, 3:キツネ
こうして一度つまずいて直した経験は、「決め打ちの数字は、データが変わると壊れる」という感覚として残ります。教科書で読んだ知識よりも、ずっと長く役に立ちます。
プログラミングは「知識」ではなく「技術」
プログラミングは「知識」ではなく「技術」です。決して暗記する必要はありません。
正しいのは、「コーディングしているうちに覚えちゃった」というアプローチです。
ここで言う「覚え」とは、頭に定着させた記憶のことではありません。「身に覚えがある」の「覚え」、つまり「経験した」という意味です。自転車の乗り方を、説明書を暗記して覚えた人はいないはずです。何度も転びながら乗っているうちに、体が覚えてしまった。プログラミングも同じです。
「覚えてください」は「経験してください」と読み替える
教える側は、つい「これは覚えてください」と言ってしまうことがあります。そう言われたら、「経験してください」と割り引いて受け取ってください。
関数の名前や書き方を頭に詰め込むのではなく、実際に書いて、動かして、エラーを出して、直す。その経験を重ねた人が、結果として「覚えている」状態になるのです。
プログラミングは「暗記は不要、経験は必要」。これだけは、ぜひ「覚えて」くださいね。
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