家庭向けから軍事用途まで 世界の最新アシストスーツ8選

ロボットが期待されている背景の一つに超高齢化社会が挙げられますが、一方でロボットに仕事を奪われるなんていう話もよく聞きますよね。ただ、「わしゃ生涯現役じゃい」と思っていても、体は正直。今までできていた仕事がなかなかうまくできなくなってきたりもします。そんな時、ロボットに仕事を代わってもらうのでなく、ロボットにサポートしてもらいながら仕事ができたらいいですよね。そこで注目されるのが、着るロボット、アシストスーツです。今回は、これからの時代一家に1台、いや一人1台になっていくかもしれないアシストスーツを取り上げます。

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イノフィスのマッスルスーツ

まずご紹介するのは、東京理科大発のベンチャー企業イノフィスが手がける「マッスルスーツEvery」。2019年末から2020年のお正月にやたらとTVCMが流れていたので目にした方も多いでしょう。筆者も実家に帰省した際、親に「すごい時代になったわねぇ」なんて言われて、ちょっとCMは盛りすぎな気もしますが、一般の方へもだいぶ浸透しているようです。
イノフィスは菊池製作所の子会社で、2013年に設立し、2019年12月に35億3000万円の大型資金調達を行うなど累計で約50億円の資金調達を行なっています。イノフィスのマッスルスーツは、空気圧式の人工筋肉を採用しているため電力が不要で、屋外や水場でも使えるのが特徴になっています。2019年11月に発売したマッスルスーツEveryは、リコーグループと協業して量産体制を整え、価格を13万6000円(税別)と、2018年に発売した1世代前の「マッスルスーツ Edge」(税別49万8000円)の3割以下に抑えています。2014年の初代モデルからのシリーズ累計で5000台を販売、Everyの初年度販売目標は1万台とのことでかなり強気。低価格とマーケティング戦略を武器にどれだけ普及が進むか注目です。

サイバーダインのHAL

過去のレポートでもたびたび取り上げているサイバーダインですが、この分野の代表格として有名ですね。世界初の装着型サイボーグを謳うHALは装着者の生体電位信号をセンサーで検出し、意思に従った動作を実現します。医療用のロボットスーツとして、厚生労働省より医療機器としての製造販売承認を取得している他、米国や欧州でも承認取得、中東ではサウジアラビア、アジアでも2019年10月にマレーシアでの承認取得取得を皮切りに対象国を増やしていくそうです。

また、医療向け以外にも自立支援や作業支援といった幅広いラインナップを揃え、災害復旧の現場でも活用されているそうです。2014年3月には東証マザーズへ上場しており、そういった面でもこの分野の代表的なパイオニア的存在ですね。映画『ターミネーター』に登場する「サイバーダイン社」や映画『2001年宇宙の旅』に登場する「HAL」は人類の敵とも言える存在ですが、現実世界ではこれからの超高齢化社会を支えるような存在になっていってほしいですね。

東京五輪でも活用、ATOUNのパワーアシストスーツ

東京2020組織委員会が2019年3月に開催した「東京2020ロボットプロジェクト」の発表会で、パナソニックのパワーアシストスーツ「ATOUN MODEL Y」が競技会場や大会関連各施設等に導入されることが発表されました。飲食物や廃棄物などの運搬業務や、大会関係者の荷物の積み下ろしなどに活用される他、東京2020パラリンピック「パワーリフティング」における競技の補助員の、プレート(おもり)着脱などの作業負担軽減に使われるそうです。

このパワーアシストスーツを開発しているのはパナソニックの子会社ATOUN(アトウン)です。2003年にパナソニックの社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」設立された同社(当時の社名はアクティブリンク、2017年4月に社名変更)は、三井物産が出資を行っている他、2019年12月に近鉄ベンチャーパートナーズ、南都リース、ハックベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施しました。ATOUN自体はオリンピックの公式スポンサーではないため名前は出ませんが、文字通り縁の下の力持ち的な存在として活躍が期待されます。

業界最安?ユーピーアールの低価格アシストスーツ

物流機器・輸送機器のレンタルを手がけるユーピーアール株式会社が開発した「サポートジャケットBb+FIT」は、2018年9月に発売された2万5,000円〜の低価格なアシストスーツです。動力を用いず、第二の背骨を謳うBb+と呼ばれる部分と腰ベルトとパワーベルトによって荷物の上げ下ろしだけでなく、立ち作業・前傾姿勢の軽作業などにも効果を発揮するとのことです。2016年に発売された初代「サポートジャケットBb+PRO」と合わせて累計1万着の販売を行ったそうです。

また、2019年10月にはモーター搭載型の「サポートジャケットEp+ROBO」を販売・レンタル開始しました。こちらはオープン価格での販売の他1日1,000円のレンタル、月額18,000円のサブスクリプションモデルでの提供を行っていて、気軽に「試してみる」環境を提供しています。普及の鍵は導入ハードルを下げる事なのかもしれません。

腰だけじゃない、クボタの農業向けパワーアシストスーツ

これまで紹介してきたアシストスーツは腰や脚などの下半身向けのものが多かったですが、農機メーカー国内首位のクボタが提供するのは上半身を中心とした農業向けのパワーアシストスーツです。 2017年1月に発売されたウインチ型パワーアシストスーツ「WIN-1」は、手元の操作スイッチで、ウインチワイヤを上げ下げすることで約20kgのコンテナを楽に持ち上げ、降ろすことができます。ワイヤが荷物を吊り上げてくれるので、腕には負担がかからないそうです。また、腰アシスト機能も備えています。
また、2013年9月に発売された「ラクベスト」は、肘を固定して腕の重みを支え、腕を上げての作業を楽にしてくれるもので、ぶどう農園やなし農園等での棚上げ作業を疲れにくくしてくれるそうです。作業が変わればアシストの形も変わってくるので、様々なタイプのアシストスーツが登場してくるかもしれません。

CES 2020で注目を集めたSarcos

以前フェイク動画として紹介した米国・Sarcos Robotics社ですが2020年1月にラスベガスで開催されたCES 2020でパワードスーツSarcos Guardian XOを公開、商業出荷を開始すると話題となりました。Guardian XO本体重量は150ポンド(約68kg)ですが、自立式であるため、自重を地面との接触部で支えることが可能なため、装着者が本体の重さを感じることはないとのことです。装着時は最大で200ポンド(約90kg)の荷物を持ち上げることができ、装着者が感じる負荷はわずか10ポンド(約4.5kg)程度とのことです。Guardian XOはレンタル式で年間のコストは1台あたり10万ドル(約1100万円)、少なくとも10台以上を一括でレンタル可能な企業向けに出荷を行い、専門のエンジニアも一緒に派遣される予定となっているとのことです。
また、米航空会社大手のデルタ航空との共同プロジェクトが発表されていて、2020前半に試験場での技術テストを予定。実際の環境で、デルタ航空の従業員が技術を体験し、機能についてフィードバックを行う予定となっています。用途としては貨物倉庫での貨物取扱いやメンテナンス部での部材移動、または重機や部品の持上げなどを想定しているそうです。ちゃんと開発を進めていたようで、フェイク動画なんて煽っちゃってコメンナチャイ。

Alexa搭載の外骨格ロボットARKE

ARKEは、障害を持つ人向けにリハビリ用ロボットを開発しているカナダのBionik Laboratories社が2017年8月に発表した外骨格ロボットです。装着者の動き、体重移動などをセンサーで検知し、その動きを助けるように動作できるます。このARKEにはAmazonの音声AIアシスタントAlexaのサービスが組み込まれているのが特長で、「Alexa, I’m ready to stand」「Alexa, I’m ready to walk」など直接的に操作ができるようになっています。臨床試験を行い、平均的な消費者にとって購入しやすい価格帯の製品、最終的には月々の支払いが車椅子のレンタルなどよりも安くなることを目指していると発表されていました。

その進捗に注目していましたが、現在公式ページを開くと404エラーが表示されるということで、開発が思うように進まなかったのかもしれません。歩けなかった。

米軍開発のパワードスーツTALOS

TALOSはアメリカ特殊作戦軍(US SOCOM)の主導の下で開発が進められていた軍用パワードスーツで「Tactical Assault Light Operator Suit」の略になります。身体能力を向上させる油圧式のパワードスーツで、コンピュータやデータリンク機能、暗視装置による装着者の支援機能を備え、また、硬化する液体を利用したリキッドアーマーや、傷口を自動で検出して泡で塞ぐ能力などの搭載を予定していました。2013年の発表以来、マーベルの人気作品になぞらえて「アイアンマンスーツ」と話題になりました。2018年の実用開始を目指していましたが、2019年2月に開発の中止が報じられました。ただし、開発に費やした5年間の歳月と8000万ドルは決して無駄ではなく、この過程で得られた知見を活用し、軽量アーマーなどTALOSからスピンアウトした軍用品が開発されていくだろうとのことです。当初、TALOSは重量は400ポンド(180 kg)未満を目指すとされていましたが、電力の課題もあって、それよりも重くなる可能性があったという話があるので、重いと不便だという学びがあったのかもしれません。生き残れなかった。