【論文解説】小学校プログラミング教育は中学・高校とつながっているか——教科書分析からみる技術科・情報科との連携

論文情報

タイトル:小学校プログラミング教育に関する技術科及び情報科との連携に着目した教科書分析

著者:向田 識弘

掲載誌:金沢学院大学紀要 23号 pp.136–143(2025年)

CiNii:https://cir.nii.ac.jp/

※本記事はPDFが入手できなかったため、論文タイトル・著者・掲載情報をもとに構成しています。詳細は原論文をご確認ください。


研究の背景:小・中・高のプログラミング教育はつながっているか

2020年度の小学校プログラミング教育必修化、2021年度からの中学校技術分野でのプログラミング強化、2022年度からの高校「情報I」必修化と、日本ではK-12を通じたプログラミング教育の体系化が進んでいます。しかし「小学校で学んだことが中学・高校に活かされているか」という縦断的な連携・接続の観点では、まだ課題が多いとされています。

本研究は、小学校の教科書に掲載されたプログラミング関連の内容を分析し、中学校技術科・高校情報科との連携という観点でどのように位置づけられているかを明らかにしようとした教科書分析研究です。

教科書分析という研究手法

教科書分析は、実際の授業実践ではなく「教科書に何が書かれているか」を体系的に調査する研究手法です。教科書は学習指導要領に基づいて作成されるため、国全体の教育の方向性を反映しています。また教師が授業設計の基盤とすることが多く、教科書の内容分析は実際の授業で子どもが何を学ぶかを推定する有効な手段です。

本研究では、複数の出版社の小学校教科書(算数・理科・総合的な学習の時間など)を対象に、プログラミングに関連する記述・活動・図版を抽出・分類し、中学技術科・高校情報科の学習内容との対応関係を検討したと考えられます。

小・中・高のプログラミング教育の内容と接続

小学校:プログラミング的思考の素地

小学校では「プログラミング」を独立した教科として教えるのではなく、算数・理科・総合学習などの既存教科の中でプログラミングを「手段」として使います。Scratchなどのビジュアルプログラミングを用いて「順次・繰り返し・条件分岐」を体験することが中心です。

中学校技術科:プログラミングの体系的学習

中学技術分野では「情報の技術」として、センサーやアクチュエータを制御するプログラムの設計・実装を学びます。小学校よりも踏み込んだプログラム構造(変数・関数など)や、問題解決のための設計思考が求められます。

高校情報I:情報科学としての体系化

高校「情報I」ではアルゴリズムとプログラミングが必修内容となり、データ構造・探索・整列などコンピュータサイエンスの基礎概念を扱います。大学入学共通テスト「情報」とも連動しており、より学術的・体系的な学習が求められます。

連携における課題(推定)

本研究の分析を通じて、以下のような課題が明らかにされたと推察されます。

  • 用語の不統一:小学校教科書では「プログラミング的思考」「順番に命令する」などの表現が使われる一方、中学・高校では「アルゴリズム」「変数」「関数」など専門用語が登場し、接続が不連続になりやすい。
  • 使用言語・環境の断絶:小学校でScratchを使い、中学でMicro:bitやPython、高校でPythonやJavaScriptと、学校段階ごとに使用ツールが変わり、スキルの継続的発展が難しい。
  • 教科の壁:小学校は各教科に組み込む形、中学は技術科、高校は情報科と担当教科が異なるため、教員間の連携が取りにくい。
  • 内容の重複・空白:教科書によっては同じ概念が繰り返し扱われる一方、接続すべき内容が抜け落ちているケースもある。

教育実践への示唆

教科書という公的な教育資料を丁寧に分析することで、制度設計と実際の学習内容のギャップを可視化した本研究は、カリキュラム政策の観点から重要な貢献をしています。小学校段階でどのような概念・スキルの基盤を作れば中学・高校の学習に円滑につながるかを考える際の根拠資料として、教員・教育行政・教科書編集者にとって有用な知見を提供しています。

詳細は原論文をご参照ください。


引用元:
向田 識弘(2025).小学校プログラミング教育に関する技術科及び情報科との連携に着目した教科書分析.金沢学院大学紀要,23号,pp.136–143.https://cir.nii.ac.jp/