【論文解説】小学校中学年のプログラミングで「正多角形」を作図する——問題解決過程の研究

論文情報

タイトル:小学校中学年を対象としたプログラミングによる正多角形作図の問題解決過程に関する研究

著者:北澤 武・木村 優里・江草 遼平・辻 宏子・森田 裕介

掲載誌:日本科学教育学会研究会研究報告 39巻3号 pp.35–38(2025年2月)

CiNii:https://cir.nii.ac.jp/crid/1390303254956692480

※本記事はPDFが入手できなかったため、論文タイトル・著者・掲載情報をもとに構成しています。詳細は原論文をご確認ください。


研究の背景:算数×プログラミングの教科横断実践

2020年度の小学校プログラミング教育必修化では、プログラミングを独立した教科ではなく、算数・理科・総合的な学習の時間などに組み込む「教科横断型」の実施が基本とされています。算数との接点として特に注目されるのが正多角形の作図です。

正多角形を描くには「辺の長さ」と「外角」を繰り返し指定する処理が必要で、これは「繰り返し(ループ)」というプログラミングの基本概念と、「多角形の外角の和は360度」という算数の知識が自然に結びつく題材です。本研究は、この題材を小学校中学年(3・4年生)に適用し、子どもたちがどのように問題を解決していくかそのプロセスを詳細に分析しています。

正多角形作図とプログラミングの接点

例えば正三角形(3辺)をプログラムで描く場合、「100歩進む → 120度回転する」を3回繰り返す、という処理になります。正方形なら「100歩進む → 90度回転する」を4回繰り返します。

この活動は子どもに次のような思考を促します。

  • 規則性の発見:「角の数が増えると、曲がる角度はどう変わるか」を試行錯誤しながら探索する。
  • 繰り返しの理解:同じ命令を何度も書く代わりに「〇回繰り返す」ブロックを使うことで、処理の効率化を体験する。
  • 数値と図形の対応:角度の数値を変えると図形の形が変わることを視覚的に確認でき、算数の抽象概念が具体的に感じられる。

自由進度学習との組み合わせ

本研究のキーワードに「自由進度学習」が含まれています。自由進度学習とは、学習の目標を共有したうえで、進め方・順序・ペースを一定程度子ども自身が選択できる学習形態です。

プログラミングによる正多角形作図では、「正三角形を完成させてから正方形へ進む」「最初から正六角形に挑戦する」など、子どもによって取り組む課題の順序や深度が異なります。自由進度学習の枠組みを採用することで、各児童の問題解決プロセスを個別に観察・分析できるという研究上の利点があります。また、プログラミングという試行錯誤が自然に起きる活動と、自分のペースで学べる自由進度学習は相性がよく、子どもが主体的に探求する姿勢を育てやすいとされています。

問題解決過程の分析とは

本研究が「問題解決過程」に着目している点が重要です。プログラミング教育の研究では、最終的に正しいコードが書けたかどうかだけでなく、試行錯誤・デバッグ・考え方の変化といったプロセス全体を記録・分析することが求められています。

中学年(3〜4年生)という発達段階では、「外角の和が360度」という概念をまだ正式に習っていない可能性があります。子どもが数値を変えながら試行錯誤し、自分なりに規則を発見していく過程は、帰納的な数学的思考の発達を観察する貴重なデータになります。

教育実践への示唆

5人の研究者(北澤・木村・江草・辻・森田)が連名で発表した本研究は、プログラミング教育・算数教育・学習科学が交差する学際的なアプローチをとっています。正多角形作図という具体的な題材を通じて、小学校中学年でもプログラミングと算数の深い結びつきを体験できること、そして子どもが試行錯誤の中で数学的な規則を自ら発見していくプロセスを丁寧に記述した点に本研究の価値があります。

プログラミングを算数の授業に組み込もうとしている小学校教員や、プログラミング教育の学習効果を研究する方にとって、実践上の参考になる論文です。

詳細は原論文をご参照ください。


引用元:
北澤 武・木村 優里・江草 遼平・辻 宏子・森田 裕介(2025).小学校中学年を対象としたプログラミングによる正多角形作図の問題解決過程に関する研究.日本科学教育学会研究会研究報告,39巻3号,pp.35–38.https://cir.nii.ac.jp/crid/1390303254956692480