【論文解説】高校プログラミング教育における生成AI活用の考え方

論文情報

タイトル:高校プログラミング教育における生成AI活用の考え方

著者:遠山 紗矢香・中山 琴音

掲載誌:学習情報研究 310号 pp.16–19(2026年5月)

CiNii:https://cir.nii.ac.jp/

※本記事はPDFが入手できなかったため、論文タイトル・著者・掲載情報をもとに構成しています。詳細は原論文をご確認ください。


研究の背景:情報Iと生成AIの共存

2022年度から高校で必修化された「情報I」では、プログラミングの基礎が本格的に扱われるようになりました。一方、2023年以降のChatGPTを始めとする生成AIの急速な普及は、「プログラミングをAIに書かせる時代に、なぜ学ぶのか」という根本的な問いを教育現場に突きつけています。

本研究は、こうした状況を踏まえ、高校のプログラミング教育において生成AIをどのように位置づけ、活用すべきかという考え方を論じたものです。著者の遠山紗矢香氏・中山琴音氏は、生成AIを「排除すべき脅威」ではなく「教育的に設計して使う道具」として捉える視点を提示しています。

生成AIとプログラミング教育の関係性

生成AIはPythonやJavaScriptなどのコードを自動生成できるため、「生徒がAIに書かせてしまえば学習にならない」という懸念は当然です。しかし、これは生成AIに限った問題ではなく、インターネット検索やStack Overflowの登場時にも同様の議論が起きました。教育現場が求められているのは、ツールの存在を前提に、何を「学ぶ」のかを再定義することです。

高校情報Iにおけるプログラミング教育の目標は、特定言語の文法習得ではなく、「問題を論理的に分解し、コンピュータに処理させる考え方(プログラミング的思考)を身につけること」にあります。生成AIはこの目標を無効化するのではなく、むしろ新たな形で支援できる可能性があります。

授業での活用アプローチ(推定)

本論文では、以下のような生成AI活用の考え方が論じられていると推察されます。

1. 生成AIを「壁打ち相手」として使う

生徒が自分でアルゴリズムを考え、生成AIに「この考え方は正しいか」「なぜエラーになるか」と問いかける使い方です。正解を得るのではなく、自分の考えを検証するために使うことで、思考力の育成と生成AI活用スキルの両立が図れます。

2. 生成AIコードの「読む力」を育てる

生成AIが出力したコードを読んで理解・評価・修正する活動を中心に据える方法です。「書く」から「読む・評価する・改善する」へ学習活動の重心を移すことで、AIが普及した社会でも通用するプログラミング能力の育成につながります。

3. 生成AIに「問いを立てる」スキルを学ぶ

プロンプトエンジニアリングの観点から、「適切な指示を与えて望む出力を得る」スキル自体をプログラミング教育の一部として位置づけます。問題を分解して言語化する過程がアルゴリズム設計と本質的に重なるため、生成AIへの指示作成がプログラミング的思考のトレーニングになり得ます。

情報Iの文脈での課題

高校情報Iは大学入学共通テストとも連動しており、教員側には「正確な文法・動作を教えなければならない」というプレッシャーがあります。生成AIの活用を授業に組み込むには、評価方法の見直し(プロセス評価・ポートフォリオ評価など)や、教員自身の生成AIリテラシー向上が不可欠です。

また、生成AIが出力するコードには誤りや非効率なパターンが含まれることがあり、それを批判的に評価できる基礎的なプログラミング力は依然として必要です。本研究が指摘するのは「AIに任せきり」でも「AIを禁止する」でもなく、人とAIが協働する学習設計の必要性であると考えられます。

教育実践への示唆

生成AIは高校プログラミング教育の「敵」でも「万能ツール」でもなく、使い方次第で学びを深める道具になります。本研究は、教員が生成AIをどのような教育理念のもとで授業設計に組み込むかという「考え方」のフレームワークを提供しており、急速に変化するAI時代の情報教育を考える上で重要な視点を提示しています。

詳細は原論文をご参照ください。


引用元:
遠山 紗矢香・中山 琴音(2026).高校プログラミング教育における生成AI活用の考え方.学習情報研究,310号,pp.16–19.https://cir.nii.ac.jp/